秋田杉の黒い森

 ことし最後となる須川高原温泉岩手県)へ、おふくろ連れて行ってきた。さすがに閑散としてて大広間はわたしたちだけかと思ったら、意外に混み合ってきた。おととしの地震で傷んだ建物はあちこち補修・改築して、小ぎれいになったはいいが、以前より使い勝手が悪くなったように思うのはわたしだけかな。

 残念なのは、昔ながらの自然石をつかった石垣の大部分が、モルタル吹き付けの、のっぺらぼうみたいな法面に様変わりしてしまい、古い湯治場の面影が消えてしまったこと(↓)。

 石組をそのまま活かすか、あらたに花崗岩を調達して職人を招いて土台から作り直すのは多くの時間と技術を要する難しい工法だから、早めに営業再開するには致し方なかったとはいえ、栗駒国定公園を代表する由緒ある温泉に、道路の法面と同じ鉛色のモルタルというのはいかがなものか。専門の石工を頼んで、頑丈な土台を石組で作り直す手間がそんなに惜しかったのだろうかと思う。

 で、須川へは地元から小安峡温泉を通って行くわけだが、いま小安は紅葉の真っ盛り。ここも国定公園で、県内有数の紅葉の名所と謳われているものの、実際はお話しにならない景観なのである。その証拠写真をいくつかあげておく。



 写真はほんの一部だ。秋を彩る燃えあがるような紅葉をドス黒く浸食しているのが、お馴染みのスギである。

 秋田の県木であるアキタスギは、かつて全国を吹き荒れた悪名高き拡大人工造林計画のもと、ブナ・ナラなど落葉広葉樹を根こそぎ伐採し、民有・国有林問わず、県内の山野に集中的に植えられた。その結果が、この景観である。紅葉を愛でに秋田の名所を訪れた観光客やアマチュアカメラマンは、どれだけがっかりすることか。

 「国定公園」が聞いて呆れるのである。それではよくないと思うし、時間をかければ落葉樹林再生が可能なのだから、かねてから新聞社に投書したり、ことあるごとに訴えてきたが、改善される気配は見られない。ドス黒いスギは相変わらず視界を汚し花粉をまき散らし、枝打ちも下草刈りも間伐もされず、放置されたままなのだ。もう次の一手に出るほかなさそうである。

 ま、機会をみて陳情でもしてみようかと思う。