秋の栗駒・須川高原

 体育の日のきょう、栗駒国定公園須川高原の温泉へ行ってきた。東北秋田の亜高山地帯は、この時期が紅葉の見ごろ。ナナカマド・ウルシが真っ赤に色づき、全山燃え上がる光景が見られる季節である。

 ……といっても秋田の山は、植林されたスギ・カラマツ林が多く、たとえ国有林であろうと、いや国有・民有の区別なしに、さらにはそれが「国定公園」であろうと、スギの黒々とした森がボコボコとあちこちに広がっているので、見事な紅葉のただ中に、さながら黒アザよろしく、ドス黒く広がるスギ林が、実に目障りな時期でもある。

 おふくろ連れて一路須川温泉へ。6月の地震で車も人も少なかろうと思っていたら、意外にも駐車場は車でいっぱいの状態。8月のお盆はガラ空きだったのに。

 ホテルのフロントに行ったら、車の大半は登山客だそう。「建物の中はがら空きですよ」と。大広間での休憩は、従来の広い和室を改築するということで、来年もしくは再来年までつかえないという。地震で手ひどい損傷を食らったため、根本的に建て直すことになったらしい。ここの名物温水プールも同様。新装オープンはずっと先のことだが、はやく全面復旧してほしいものである。

 地震は周辺の温泉に甚大なダメージをもたらしたけれど、温泉の質はなんら変わるところはない。真っ赤な須川高原、燃え上がる栗駒山と秣岳を眺め、今年最後になりそうな須川の湯治を楽しんできた。

 帰りは久しぶりに須川湖(朱沼)へ寄り、山なみを背にボート遊びをする家族連れをデジカメで写してみた。

 道路は秋田県からしか通じていないのに、たくさんの観光客が訪れていた。例年だと車の列で身動きがとれない状態だが、アクセスが最悪に近い状態にもかかわらず、秋の栗駒の風を味わいたいという人がこれだけ多いということだろう。

 地震の傷は深い。でも自然災害と私たちは、どうあっても付き合っていかなくてはならない。自然を思いのままにコントロールなどできるわけもないからだ。自然はときに残酷だけれど、こうして量りしれぬ恩恵をもたらしてくれる。自然は、遠い祖先からなる私たちを生み育んできた、私たちの母そのものなのだ。