小安峡はまるごとスギ植林地

 紅葉真っ盛りの県内、夜6時10分からのNHK「ニュースこまち」で、湯沢市皆瀬の小安峡温泉が紹介されていましたね。県内の紅葉の名所シリーズの一環で、県南部を代表する?わが湯沢市の一大観光地が出るのは、地元として喜ばしいことです。

 番組では、温泉街を包みこむ山野や、栗駒国定公園が朱や黄に染まっている光景を“必死”に伝えようとしていました。なぜ“必死”かというと、紅葉の見ごろは限定的であることと、小安温泉周辺は国定公園ではあるけれど、実際は紅葉の名所に値するものではないからです。

 しかしNHKはそんな実態を報じてはくれませんでした。これはまずい。「事実」を伝えないと、とんでもない事態が引き起こされるかもしれないし、なによりバランスをとって是非を論じないと、健全な県民性がはぐくまれないのではないかと思うのです。

 その「事実」とはなにか。それは、小安峡は紅葉の名所どころか、まるごとスギ植林地と言っても、言いすぎじゃないのです。

 では、バランスをとるべく、小安峡の「事実」たる証拠写真をお見せしましょう。撮影したのは本日2011年10月20日(木)、午前10時半ころから正午過ぎにかけてです。






 いかがですか? この写真はすべて、小安峡温泉街をとりまく山野です。高い山々は、たしかに紅葉に萌えていますが、そのてっぺんや、中らへんや、裾野に、ドス黒いスギ植林地が、漆黒のアメーバのように、あるいは黒アザのように、どっかりと占拠しているのであります。

 里山ならいざしらず、これで「紅葉の名所」であり、国定公園なんですよねえ、秋田の。笑っちゃいます。

 おなじ栗駒国定公園でも、宮城の鳴子峡や鬼首なんか、度肝を抜くほど見事な紅葉。まさに燃え上がる山々です。その差は歴然。

 ぐるっとひと回りしてみましたが、スギ人工林、ほとんど手入れはされていません。若干、枝打ちを行った箇所がありましたが、多くは放ったらかし。幹の細い線香スギや、枝の伸び放題スギだらけ。下草刈りもされてないのでヤブも生い茂り、間伐されておらず暗いままの森。

 秋田の森は黒い――そんな陰口が頭をよぎります。

 さて、まるで燃え上がるような、全山が見事な紅葉に染まった小安峡を期待して訪れた方々は、この景観を見て、なんと思うでしょうか。

 詐欺。うそつき。騙された。どこが紅葉の名所だふざけるなってところでしょうか。

 写真を趣味にしている人も、ファインダーにスギ林が入らないように、細心の注意を払いながら、伐採の魔手が及ばなかった皆瀬川沿いの断崖の広葉樹を狙うしかないことでしょう。

 観光客からスギが目障りだと苦情がきたとの話は、いまのところ耳にしていませんが、このままスギ植林地を放置状態にしていては、いずれクレームがくることでしょう。

 秋田県側の栗駒国定公園を走る国道108号や342・398号、県道仁郷大湯線(旧栗駒有料道路)沿いのスギ植林地の無残さ・無粋さは秋田の恥といえますが、仁郷大湯線の方は、ことし夏ころから、植林スギの間伐が行われております。あれと同じ事業を、小安峡で、いや県内すべての国立・国定・県立公園、自然環境保全地域で行うことはできないでしょうか。

 国定公園内とはいえ、スギ植林地の少なからぬ部分は国有林ではなく、民有林・部落共有林と思われますが、価値の低いスギに所有者はどれだけ期待を寄せているのか。個人や部落が大切に育てている本当に必要なスギ植林地は残し、放置スギ植林地は市や県が買い取って間伐・択伐し、本来あるべきブナ・モミジ・イタヤカエデに植え替えることを、真剣に検討されてはいかがかと思います。

 いまのまま30年、50年も経って変化がないようでは、小安峡、湯沢市、ひいては秋田のためには決してならない。わたしは強く断言します。

 NHKにもひとこと。わが地元の景勝地を紹介してくれるのはありがたいのですが、「…しかし、周辺の山々はスギ植林地が広がり、見物客の不評を買うおそれもあり、今後の検討課題になるかもしれません」との論評をちょっとだけ混ぜてくだされば、「余計なことは言ってくれるな」と反発を招くおそれもさることながら、ある意味、地元を目覚めさせるきっかけになるかもしれません。その結果、NHK秋田放送局の信頼度も、さらに上昇すると思われます。

 ぜひ「今後の検討課題」にしてください。

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