事業者目線の地熱開発

 ノンフィクション作家の町田徹という人が、地熱発電開発について何か言ってる。

 環境省のレンジャー(自然保護官)として現場を管理する自然環境局を、再生可能エネルギーへの期待を膨らませている国民感情と政府の意向を無視し、コストの高い“斜め掘り”でしか認めず、事実上、あらたな地熱開発を禁じたと批判し、「国益の変化とは無縁のレンジャー部隊に国策を委ねること」の問題を提起しているのだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32033

 長文なので長い引用も抄録もしないでおくが、内容としては自然環境局を「中央官庁の組織とは異質の存在」「戦前の関東軍の行動を彷彿」と批判し、国立・国定公園の特別地域での開発(コストの安い垂直掘り)を認めよというもので、「これ以上地熱発電の育成・振興を妨げ続けるのならば、『環境省関東軍』にメスを入れる必要がありそうだ」と結んでいる。

 斜め掘りではなぜダメなのか。コストが高いと書いたが、垂直掘りに比べて2倍かかるらしい。

 実際の調査では、20ヵ所ぐらい採掘することが多いので、斜め掘りは、事業計画上の調査コストが80億円から160億円程度に跳ね上がる原因になる。地熱発電所は、環境アセスメント手続きなどもあり、8年から10年程度の開発期間が必要。この間、採掘コストも回収できないため、投資リスクを負う事業主体がいなくなるという。

 なるほど。垂直掘りでないと採算が合わないというわけか。見事な事業者目線ですな。

 地熱発電開発は、まさにわたしの地元の計画である。いまのところ別に反対はしてないけれど、個人的にふたつの面で疑問を感じはじめているので、せっかくだから書いておこう。町田氏の見解も真摯に拝聴するとして、ここはバランスを取るだけにしておきたい。

1.環境影響評価(アセスメント)での、鳥類の調査に疑問
 一見しただけだが、これデタラメじゃないか、アリバイ作りにもなってないぞと思わされるような内容だったので。
2.周辺の温泉に及ぼす影響の存否についての疑問
 秋田では過去に八幡平の大沼地熱発電所が出来たとき、上トロコ温泉の源泉が完全に枯渇したのをはじめ、銭川温泉に複数あった源泉がほとんど涸れてしまったり、温度の低下をみたり、さらには泉質の変化を来したりした。澄川地熱発電所建設後には大規模な土砂災害が発生して澄川・赤川温泉が壊滅するなど、大変な状況に陥ったことがあった。地熱発電所建設との因果関係は不明のままだが、地元の温泉組合と折衝が行われたと記憶している。今回の開発は、地元とどんな話し合いがなされるのか、見極める必要がある。

 というわけで、これ以上地熱発電所建設による自然破壊を続けるのならば、「事業者目線の地熱開発」にメスを入れる必要がありそうだ。