「冬季の岩盤浴は諦めて」

 玉川温泉の雪崩事故の防止策について、佐竹知事が記者会見で言ったそうです。地元紙の記事の一部をコピペ。

玉川温泉雪崩「柵で防げない」 知事、設置に否定的
 (前略)再発を防ぐには以前のように冬季閉鎖するしかないと強調。「国立公園内でもあり、防護柵で安全策を講じるのは物理的に無理。設置には莫大(ばくだい)なコストも掛かる。ニーズがあってもどこかで妥協し、諦めることが必要ではないか」と指摘した。
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20120206q

 あのワシ(表層雪崩)事故後、犠牲者を悼むとともに気がかりだったのが、いかなる雪崩防止の対策を県や町が講ずるかということでした。

 いちばん考えられるのは雪崩防護柵の設置です。あちこちの斜面にホチキスみたくガッチガッチと。鶴の湯がそんなふうになってしまいましたし、泥湯もそうなっちゃってます。

 国立・国定公園内でですよ。

 アレと同じ真似を玉川でもやらかすのか…とげんなりしていたところでした。

 ところが知事は「物理的に無理」「諦めるべき」と結論付けていました。

 これは賛成です。あんな地質が脆く、火山性地滑り地帯に柵なんて非現実的。よほど金をかけて頑丈に根深く作らないと、防雪柵は崩れてしまいます。

 だから知事の見解は、大いに賛同できます。そもそも玉川温泉は、20年ほど前まで冬季閉鎖の温泉地だったのですから。

 でも、玉川ファンとしては複雑な思いも抱いてしまいます。

 玉川の岩盤浴は、難病患者にとって唯一無二の「最後の頼みの綱」なのです。

 あの岩盤浴で難病、とくに末期がんが完治した人はいません。岩盤浴は難病を治癒に運びません。そんな事例も根拠もありません。

 ただ、腫瘍などが小さくなって、CTやレントゲン画像から消えたケースがいくつかあるそうですが、岩盤浴や湯治との因果関係は不明です。

 医者に見放されて玉川をおとずれ、余命をはるかに超える年月を送り続ける患者も珍しくないそうで。

 聖地巡礼さながら玉川をおとずれる難病患者は、そこに一縷の望みをつないで、はるばる秋田までやってくるのでしょう。

 冬季の営業を開始したのは20年ほど前からですが、年中岩盤浴ができることになったおかげで救われた患者もいるでしょう。

 たとえ雪崩の危険があろうと、ロープで岩盤浴場が閉鎖されていようと、一縷の望みを捨てるわけにはいかないと、患者はカンジキはいたりスキーをつけたり、ボッカにソリを引っ張ってもらったり、それこそ這ってでも岩盤浴へ行くことでしょう。あそこはそういう場所なのです。

 過去に記録もない、たった一度の雪崩で、全国に散る難病患者の命運が決まりかねないなんて、自然の無慈悲さ・不条理さを痛感しています。