どっぷり雄物川紀行?

 秋田県の地方紙「秋田魁新報」の連載企画「どっぷり雄物川紀行」の、4月21日と6月4日の「番外編」で、雄物川流域のゴミ問題をルポしていた。そのタイトルとリンクだけ、まず貼ってみる。

下流域ルポ(秋田市)]/「美の国」いずこ、終着点ごみの山
http://www.sakigake.jp/p/special/10/omonogawa/article0_01.jsp
[不法投棄現場を歩く]/「犯罪」の意識希薄 ごみの山、人のエゴ
http://www.sakigake.jp/p/special/10/omonogawa/article0_02.jsp

 読んだ感想は「いけしゃあしゃあ」とか「盗人猛々しい」とでも言おうか。本文は長いので貼らないつもりだったが、以下の一文はけっこう癪に障ったので貼る。

 国土交通省秋田河川国道事務所が1、2月に河畔林を伐採して河岸を整備したため、いったんごみは撤去されたようだが、雪代に運ばれてたちまちごみが散乱していた。(略)
 「川の汚れに地域の品格が表れる」。08年9月、当時秋田市長だった佐竹敬久知事は現状を憂えた。発言をそのまま受け止めれば、美の国の住民の品格は相当低いと言わざるを得ない。
(“「美の国」いずこ、終着点ごみの山”より)

 確かに流域のゴミは深刻である。写真にもあるが、家庭ゴミならまだしも、冷蔵庫やテレビ・農機具・古タイヤ・自転車などの粗大ゴミと言っては生やさしい特大ゴミで埋め尽くされた河川敷は、まさに住民や県民の品格を大きく損なうマイナスイメージそのもの。

 でもね、私は知ってるんです。

 記事にある国土交通省秋田県が、いままでやってきたこと、いまもやっていることに比べたら、こんなゴミなんぞ、物の数じゃないってことを。

 ついでに言うと、こんな連載企画をぶちあげている「さきがけ」も、ゴミ問題は大きくスペース割いて報道するけれど、これよりもっともっと酷い現状を、見事にスルーしているんです。

 それは東成瀬村成瀬ダム

 国定公園と森林生態系保護地域に接している手付かずの自然、その命脈たる渓谷を、コンクリートと岩石の集合体で出来た巨大な「ゴミ」でもって、分断しようとしているんです。これをやっているのが、自民党政権時代からの国土交通省秋田県。記事にあるゴミ投棄の、おそらく何万倍といえる超巨大な自然破壊を、国土交通省秋田県が実行してて、さきがけも推進しているんですよね。

 ゴミを捨てている人は、国交省や県が超ド級の自然破壊をやっていることを知っているのかもしれません。国や県がやっていることに比べたら、こんなの全然、大したことじゃないと。

 実際、そのとおりです。わたしは断言できます。

 違法であり、犯罪であることを知りながらゴミを投機するのは、国や県が抱える矛盾をあぶりだす手段としては、案外有効かもしれません。もちろん犯罪は犯罪ですから、みつかれば警察に捕まりますが。

 清和源氏の末裔で、蝦夷奥州藤原氏の血をも引くらしい佐竹敬久知事は、秋田市長時代に「川の汚れに地域の品格が表れる」と語ったそうですね。成瀬ダムで埋められた渓谷や削られた山肌には、わが郷里のどんな品格が表れるのか、いちどお尋ねしたいところ。

 地域住民の品格ですか。ゴミを捨てないことはもちろんですが、いま造られてる巨大ダムを中止させることによって、それを全国へ示すってのはどうでしょうか?

 「さきがけ」に申し上げたいのは、年明けよりはじまった「どっぷり雄物川紀行」は素晴らしい連載ですが、読者の心を揺さぶるルポを読ませたいと思うなら、そうしたタブーに切り込む姿勢をみせるのも、ジャーナリズムのあり方ではないかと思うのです。
 (何度か編集します)