代替案はむしろ地元主導で

 記事が前後しますが、地元自治体の首長らが県知事に建設促進の要望書を提出した報道も貼っておきます。

成瀬ダム建設促進求め知事に要望書 地元首長ら
 「雄物川水系・成瀬ダム建設促進期成同盟会」(会長・五十嵐忠悦横手市長)、「成瀬ダム水道利水対策協議会」(同)、「雄物川中流整備促進期成同盟会」(会長・栗林次美大仙市長)の3団体は6日、県庁で佐竹敬久知事に「成瀬ダムの建設促進を求める要望書」を手渡した。
 県庁を訪れたのは、五十嵐忠悦横手市長、齊藤光喜湯沢市長、栗林次美大仙市長、大江尚征羽後町長、佐々木哲男東成瀬村長、県雄物川筋土地改良区の柴田康二郎理事長ら。五十嵐市長が「雄物川流域の住民の生命財産を守り、安全で快適な生活基盤と農業を中心に据えた豊かな経済社会の構築のため、成瀬ダムの事業の継続を決定し、一日も早い完成を図ることを国に強く働き掛けることを要望する」とした要望書を佐竹知事に手渡した。
 佐竹知事は「ダム方式が最も良いというのが、われわれの結論。もし、国の考えがそうでないとするならば、地元住民に科学的、理論的な代替施設を示さなければならない」とダムの必要性を強調した上で、「全国知事会で意見をまとめて国に要望する。地元の国会議員にも、その気になってもらわなければならない」と述べた。
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20091106m

 県知事は「(国は)地元住民に科学的、理論的な代替施設を示さなければならない」と語ったそうですが、国まかせではなく、地元が率先して代替案づくりに取り掛かるのが本筋ではないでしょうか。

 成瀬ダムこそが「われわれの結論」ですか。地元のことは地元で決めるといえば聞こえはよいのですが、私が調べた限りでは、秋田県南地方の農業用水確保に、ダム以外の道を、真剣に探った形跡が、ほとんど見られないのです。水不足とくればダム、洪水とくればダムと、まさに最初っからダムありき。

 水を用立てるには水路改修やため池の混在化や、上手な水のやりくりを徹底することで、十分対応できるし、事実、これまでそうしてきたではありませんか。過去における水不足による農業被害が、どれだけだったかご存じでしょうか。農林水産統計年報に干害の被害報告は載っていません。なぜだか知っていますか? 微々たるものだからです。

 治水もそう。確かに過去に幾度か洪水被害があります。では成瀬ダムをつくることでどれだけ被害を抑え込めるのか、真面目に検証したのでしょうか。雄物川下流域にあって大人口を擁する秋田市が水浸しになったら大変ですが、成瀬ダムは秋田市内を流れる雄物川の水位を、わずか5センチそこそこしか下げられません。幼児用ゴム長靴の半分程度の効果なのです。到底「有効」と言えるレベルではない。これでどうして「ダム方式が最も良い」と言えるのか理解に苦しみます。だいいち、戦後すぐに起こった大洪水を受けて発表された「肴沢ダム」は、東成瀬村の反対に遭って撤回したではありませんか。もしほんとうにダムによる治水を実行するなら、肴沢ダムは断固として建設すべきでした。

 県知事もしくは各市町村長は、このさい思い切って「国交省の方針にしたがう」と声明をだしてほしいのです。そして地元が主体となって、国交省や専門家と共同で代替案を検討・立案するのが望ましい。そうすれば秋田は、いちはやく脱ダムを表明し、これを実行した県となり、自然を守り愛する姿勢が高く評価されて全国の称賛をあつめ、地域主権・自立の試金石として注目されるばかりでなく、県民が誇りを取り戻し、真の意味で活性化を果たすことにつながると思うのです。

 いかがですか?