『DRAGONBALL EVOLUTION』

 2006年8月15日の日記で、『ゲド戦記』をアニメ化した宮崎吾朗監督に対し、原作者のル・グウィンさんは、原作とアニメとのあまりの違いに憤慨していることを紹介した。ストーリー・構成に看過できぬ差があり、忠実さがかけらもみられない、というものであった。この問題は訴訟などで大きくなることはなく、それっきりで終わったようだが、このほど実写で映画化された『DRAGONBALL EVOLUTION』(ジェームズ・ウォン監督)についても、似たような問題が噴出しているようだ。

 ただし『ゲド戦記』と違うのは、問題視しているのは作者ではなく、ファンなのである。

 「あんなのドラゴンボールじゃない。まったく違う!」というもの。しかし当の作者・鳥山明さんは、映画公開にさきがけてこんなコメントを出していた。

 「脚本やキャラクター造りは原作者としては『え?』って感じはありますが、監督さんや俳優の皆さん、ボクやファンの皆さんは別次元の『新ドラゴンボール』として鑑賞するのが正解かもしれません。もしかしたら現場のパワーで大傑作になっているかもしれませんよ。おおいに期待しています」

 というわけで、大いに期待をこめて、昨夜北上のシネコンで『DRAGONBALL EVOLUTION』を鑑賞してきた。簡単に感想を。

 下馬評と同じく、これは連載マンガのドラゴンボールとはかなり違う。孫悟空とブルマがドラゴンボールを求めて旅をし、宿敵・ピッコロと死闘を繰り広げる大まかなストーリーはそのとおりで、登場人物の孫悟飯亀仙人・チチ・ヤムチャ・マイも原作に沿ってはいる。でもそれぞれのキャラの風貌や性質は、えらい剥離っぷり。原作をヒントにした同名キャラによる、オリジナルストーリーと言ったほうが正しいだろう。ゲド戦記と同じです(ゲド戦記の原作は知らないがw)。

 これはまったく予想通りだったので、私はそれなりに楽しめたが、原作に忠実なキャラとストーリー展開を期待していたファンは、そうとうガッカリしたことと思う。実際、予告編公開時から、原作をあまりにも捻じ曲げている、みたいな失望感がムンムンしていた反面、これは別個の作品と捉えるべきあって、見方を変えて楽しもうという声も少なくなかった。

 考えてみれば、世界の文化をリードするハリウッドが、そうそうたる俳優を提供し、日本の一マンガを実写化してくれるなんて、物凄いことです。むしろ感謝しなきゃ。とはいえ、主役の悟空役・ジャスティン・チャットウィンが『宇宙戦争』に出演していた少年と知っていた以外は、他の役者がだれがどういう俳優さんなのかまったく知らない。序盤の舞台はアメリカだが、キャストは中国系の役者が多かったし、日本人はマイ役の田村英里子とあと一人いただけ。田村をハリウッド女優と呼べるかよくわからんが、セリフがほとんどないのが興味深い(笑)。チチ役のジェイミー・チャンやブルマ役のエミー・ロッサムが色っぽかった。いずれにしてもメジャー級のハリウッド・スターではなく、多くは無名か、売り出し中の俳優だったみたい。

 内容についてはネタバレになるかもなので、これくらいにしたい。まあまあ、見ごたえはあったというのが率直な感想です。ドラゴンボールファンなら、ぜひ映画館へ。