さいきん読んだ3冊

 『奥州藤原氏

奥州藤原氏―平泉の栄華百年 (中公新書)

奥州藤原氏―平泉の栄華百年 (中公新書)

 『蝦夷』『蝦夷の末裔』につづく、奥州3部作のしんがり。後三年合戦で生き延びた藤原清衡が興した平泉の栄華と滅亡までを描いたものと思ったら、たんに藤原四代を追っていくのではなくて、百年の栄華を築いた背景を、既存の古文はもちろん、都の公家の日記をも精査して詳述した。『蝦夷の末裔』までは絵解き謎解きで面白さもあったが、これはちょっと疲れた。もちろんかなり参考になった。

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 『大河次郎兼任の時代』
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 で、前九年合戦で滅亡した安倍氏の流れをくむ大河次郎兼任(正任の子孫らしい)というのが、いまの秋田の五城目あたりを地盤に藤原氏のブレーンとして存在しており、藤原泰衡が死んだあと、鎌倉政権へ捨て身の反撃に出てあえなく憤死した記録をつづったもの。著者の小野一二氏は小説家で、基盤となる文献は、問題の多いとされる『義経記』にかなり拠っており、それに小説家らしい推測と夢想もまぜこぜになっていて、ところどころに初歩的な間違いが見られた。それでもわが秋田にこれほどの英雄がいたということを教えてくれたという意味ではよかった。

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 『南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌』

南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌

南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌

 いろんな方が書いているけれど、まず値段が高い。んで内容的にも「全貌」と銘打つには「?」。いや、確かに著者3名の思いと犠牲者の無念と、かの裁判で名誉を汚された被害者の気持ちは伝わったが、こないだ書いた笠原さんの本の方がはるかに充実していると思ったのは俺だけかなあ。内容についての自分の感想は省略するとして、読みながら思ったのは、ここ数年で論争は、びっくりするほど進化したな、ということ、それに尽きる(実際はちっとも変わってないのかもしれないけれどね。特に否定派のやり口)。

 きのう最高裁で、ある判決が確定した。そのニュースも貼っておく。

南京事件研究書で賠償確定
 南京事件の研究書で事件の被害者とは別人と指摘され、名誉を傷つけられたとして、中国人の夏淑琴さんが、著者の東中野修道亜細亜大学教授と出版元の展転社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は5日、教授と同社の上告を退ける決定をした。東中野教授と同社に計400万円の支払いを命じた1、2審判決が確定した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090205/trl0902052206007-n1.htm

 相撲の取り組み、東方(右)の力士が西方(左)の力士に猛然と突っ込んでいくが、西方力士が一瞬ひるんだのち、落ち着いて前みつをとり、うわ手をとって、じわじわ土俵ぎわへ追いつめ、東方は捨て身のうっちゃりを試みるもかわされ、最後は西方に寄り切られる――そんな勝負であろうか。