書評

東日本大震災――教訓は活かされたか

景勝の街、無残 陸前高田、一面がれき http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110313_7 津波覆った岩手・陸前高田市 日常から一瞬、がれきの山 http://www.asahi.com/national/update/0312/TKY201103120572.html 山内ヒロヤス著『砂の城』を読ん…

検察審査会が創りあげた冤罪

記憶の闇―甲山事件〈1974→1984〉作者: 松下竜一出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1985/04メディア: ハードカバー クリック: 7回この商品を含むブログ (2件) を見る 名前くらいしか知らなかった甲山事件に関する本を、あの故・松下竜一さんが書いていた…

女子高生の秋田弁講座

友人によれば、秋田県内の子ども同士の会話は、すっかり標準語になり果ててしまったそうです。これは私も体感してまして、10年ほど前に山村の小学校へ取材で通っていたころ、僻地にもかかわらず児童の言葉遣いが、自分のころとは打って変わってこぎれいにな…

震えるほどの本

新年最初のエントリーは書評。以前読んで、寒けがするほど衝撃を受けた三冊を紹介します。 * * *国が川を壊す理由(わけ)―誰のための川辺川ダムか作者: 福岡賢正出版社/メーカー: 葦書房発売日: 1996/05メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブロ…

『八ッ場ダム』の書籍

本文で引用したものも含め、八ッ場ダムに関する書籍をいくつか紹介しておきます。八ツ場ダムの闘い作者: 萩原好夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1996/02/28メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (2件) を見る ダム建設予定地に生まれ住ん…

いまさらながら「派遣村」に思う

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)作者: 湯浅誠出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/04/22メディア: 新書購入: 45人 クリック: 434回この商品を含むブログ (216件) を見る 先週9日に東京へ向かう新幹線の車内で読んだ。昨年暮れから正月にか…

さいきん読んだ3冊

『奥州藤原氏』奥州藤原氏―平泉の栄華百年 (中公新書)作者: 高橋崇出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2002/01/01メディア: 新書購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ (5件) を見る 『蝦夷』『蝦夷の末裔』につづく、奥州3部作のしんがり。後三…

『蟹工船』読んだ

「おい、地獄さ行ぐんだで!」――。 最近売れて話題の本『蟹工船』を読んだ。小林多喜二著で、1929年に『戦旗』に発表されたものだ。 発表から80年近く経つ近代プロレタリア文学が、21世紀のいまになって脚光を浴びたわけは、文芸評論家や小説家など、いろい…

『村に生きる 杉山家のひとびと』(無明舎)

1999年10月、埼玉から一組の新婚夫婦が、秋田県東成瀬村に引っ越してきた。 それまでの生活を捨て、雪深い東北の山村にて自給自足に踏み切り、はや9年。自然豊かな四季のうつろいの中で、数々の失敗と試行錯誤を重ね、地域の人たちとの触れ合い、新しい出会…

『炎立つ』を読んで

ユネスコ世界文化遺産に登録が期待され、この7月にも正式に可否が発表される平泉を舞台にした『炎立つ』を、いまさらながら読んでみた。 NHK大河ドラマの原作であり、平安時代の東北で起こった戦乱と政治の駆け引きが、5巻にわたってまことに痛快に小気…

『「もののけ姫」の秘密 遥かなる縄文の風景』

去年、久慈力さんの『大和朝廷を震撼させた蝦夷・アテルイの戦い』(批評社)を読んだものの、内容の密度の濃さに感想をかくのをためらわれ、蝦夷(えみし)を勉強するならもっと初歩からでないと駄目だと痛感させられた。 で、高橋崇さんや工藤雅樹さんの著…

稀有の政治家の晩年

最近読み終わった書籍は、『毎日新聞』記者の横田信行さんが著した『赦し 長崎市長本島等伝』(にんげん出版)だ。二週間ほど前の全国紙に広告が載ってて、即効でアマゾンへ注文し、一週間ほど前に届いた。 本島元市長は私が尊敬できる数少ない政治家のひと…

最近読んだ本

書評なんておこがましい行為は差し控えたいところだけど、わざわざ「書評」なんてカテゴリをつくった以上は、それっぽい真似をしないと格好がつかない。 本の良し悪しを決めるのは著者でも編集者でも書店でもない、読者である。「この本は素晴らしい」とどの…

『原発崩壊―誰も想定したくないその日』を読んで

著者の世代が読者に近いと、文章が読みやすくて、親しみやすいのは仕様だろうか。 ある先輩ジャーナリストによれば、読者層というのは著者の年齢プラスマイナス10歳になっているのだそうだ(プラマイ5歳だったかも)。40歳の私が本を書けば、30・40歳代の人…

『うたりたちの古里』

いまから20年前、仙台で単身学生生活を送っていて、学校から帰る途中に立ち寄った小さな本屋で、ひとつの文庫本に目がいった。 『つかのまの二十歳』というタイトルで、作者は畑山博。集英社文庫だったと記憶している。 そういえば俺もそろそろ二十歳だよな……

無駄遣いを煽るメーカー

カテゴリに「書評」を追加。 ふだん、プロバイダーの本アドレスを使うことはないけれど、いちおうきっちり設定しておこうと思い、PCのメールソフト(Microsoft Outlook=マイクロソフト・アウトルック)を起動した。 で、契約しているプロバのぷらら会員登…

英雄の名は自然に帰す

5月25日の日記で私はこう書いた。 岩手がうらやましいな。だれもが誇りに思える偉大な先人がいて,それが近世の政治家とか軍人とか学者とかスポーツ選手ではなく,遠いはるかな昔の,古代東北の先住民・蝦夷のひとりだったなんて。秋田にはいないのかね,ア…

八峰町の白神山地はスギ植林地

島根県の石見銀山がユネスコの世界遺産に登録されることが決まったとの報道で、わが秋田の白神山地が1993年に、日本で最初の世界遺産に登録されたときのことを思い出した。 秋田・青森にまたがる白神山地は、もともとただの深山。これといった高峰も秀峰もな…

『大和朝廷を震撼させた蝦夷・アテルイの戦い』つづき

本書の著者・久慈力さんは,もちろん私は面識ないが,実は私が過去にルポを書かせてもらった某週刊誌の準レギュラー執筆者であった。最近見かけないけれど東北ローカル・岩手の抱える問題をいくつか報告されたりと,その姿勢や精力的な記事は私にとっても大…

『大和朝廷を震撼させた蝦夷・アテルイの戦い』を読んで

高橋克彦の『火怨』につづく読書の対象にえらんだのは久慈力著『大和朝廷を震撼させた蝦夷・アテルイの戦い』(批評社)である。帯に「自然とともに共生社会に生き,自然と人間を征服しようとする大和朝廷と戦ったエミシやアテルイの生き方に学ぶ,格好の入…

高橋克彦著『火怨』を読んで

いまさら言ってもしょうがないけれど,もっと早くに読むべきだったとあらためて思った。高橋克彦著『火怨 北の耀星アテルイ』(上下巻=講談社文庫)。古代東北の先住民・蝦夷(えみし)の英雄アテルイ(阿弖流為)とモレ(母礼)の生涯を,壮大なスケールで…

安倍宗任に関する覚書

いま読んでいる金野靜一著『新・みちのく物語 ――前九年・延久・後三年合戦――』(盛岡タイムス社)より,私がこのブログでたびたび挙げてきた安倍宗任(安倍貞任の弟。安倍首相の祖先といわれている)について,ここで覚書をしておく必要が出てきた。 本書「…