お、自然にやさしいダムだ

 今月4日ころのお話です。

 H村へ写真を撮りに出かけたとき、通りかかった沢筋に、完成したばかりの砂防ダム(堰堤)が目に付きました。砂防・治山ダムとくればコンクリート製が当たり前ですが、その堰堤は、ほぼ全部が、木製なのでした。

 12月1日の『朝日新聞』県内版で、こんなニュースを見ていたので、すぐ理解できました。

「木製ダム」全国大会へ/二酸化炭素削減
 地球温暖化を防ぐため、二酸化炭素削減に向けた取り組みを発表する「おらほのCO2ダイエット作戦」(県地球温暖化防止活動推進センター主催)が30日、秋田市の県児童会館で開かれ、「木質土木構造物研究会」による、秋田杉を使った木製ダムの取り組みが最優秀賞を受賞した。
 治山ダムは、コンクリートや鉄でつくるのが一般的だが、県は01年に、秋田杉の間伐材を使い、100%木製のダム建設技術を開発した。他県でも木製ダムの建設例はあるが、部分的に木材を利用したものだという。
(以下略)
http://mytown.asahi.com/akita/news.php?k_id=05000000812010002

 記事では、こういった木製ダムは県内に約50基あるそうですが、ここH村でも環境意識が高まって、新たに木製ダムが造られたのだと思いました。

 せっかくなので写真に収めておこうと思い、近づいていくと……。

 「な、なんだこりゃ」

 木製100%と思ったら、見た目だけのゴマカシでした。

 ダム本体はコンクリート造りで、表面だけが、スギ間伐材で覆われているのです。それに周囲をよく見ると、沢岸も沢床も、コンクリートでガチガチに固められているではありませんか。

 これではカジカもホタルもサンショウウオも棲めません。樹木も生えません。

 車道からすぐの場所にあって、通りかかりの車から望める木製ダム。この砂防ダムを見たひとは、「や、木で出来たダムだ、自然にやさしいダムだ」と感動するでしょう。自然破壊への風当たりが強く、環境意識が高まる時代にあって、「まだまだ捨てたもんじゃない」と、ほのかな安心感と期待感を抱くことでしょう。

 しかしこれに限っては、まったくの捏造なのでありました。見た人は全員、騙されるでしょう。まったくもって施工業者の技術には恐れ入るほかありません。私でさえ見事に騙されてしまいましたから。

 木製ダムにはコスト・耐久性に問題があります。近自然型(親自然型・多自然型ではない)の伝統工法が普及しづらいのも分かります。秋田県内では柳枝工や木工沈床工や粗朶沈床工といった、古くからの治水工法が見直されていたこともありましたが、これが一般的になるのは、残念ながらいまの段階では絶望的。せいぜい話題づくりと余興がてら、一部の河川で実験的に行われる程度。

 だからといって、人目につきやすい場所はダミー木製ダムで誤魔化すなんて、発注者側は良心が咎めませんか。これで「環境に良いことをした」と満足できるのでしょうか。

 こんな小手先のやり方で人目を誤魔化すような真似はせず、どうせならコンクリート砂防ダムを断固として造り、自然を完膚なきまでぶっ壊して、ひとびとの環境問題への不安を煽って目を覚まさせ、否が応にも関心を持たせたほうが、問題解決への早道ではないですか。

 せっかくなので、私も騙されたインチキ木製ダムの画像を2枚ほどあげておきます。


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 この日記も事情があって公開を伏せていましたが、解禁します。