鳥インフルエンザ騒動から見えること

ハクチョウに餌付け


 ラムサール条約で知られる宮城県伊豆沼へ行ったとき、たくさんのハクチョウやオナガガモが、人々からエサをもらっている光景に感嘆した記憶があります。

 人馴れしたハクチョウたちは、私がエサのかっぱえびせんを持って歩くと、遠くから大喜びで飛んできてエサをねだり、こちらが歩けばまるでよちよち歩きの子ガモのように、後ろからぞろぞろついてくるのでした。ほんとに可愛い。もう10年以上も前のことです。

 秋田の十和田湖周辺で見つかったハクチョウの死骸から鳥インフルエンザが検出され、県自然保護課は付近のハクチョウの飛来地における餌付けを自粛するよう通達を出し、この申し合わせは県内全域に及びました。

 野鳥への餌付けは賛否あり、ハクチョウと市民とのふれあいを大事にすべきという肯の意見と、野生生物へ人間がエサを与えては生態系をゆがめることにつながるという否の意見があります。これは微妙な問題ですが、私としては後者に与します。日本野鳥の会も、たしか否定的な見解だったと記憶しています。日本自然保護協会もしかり。

 とはいえ、子どもからお年寄りまで気軽に野生動物や自然に親しめる機会や場はそうそうありません。秋田では事実上禁止されたけれど、他県では規制されていないところもあるし、罰則もありません。

 養鶏業を営む知人は、ニワトリを鶏舎から出さないようにと県から指示されたことに不満をもらしていましたが、万が一、鳥インフルエンザが蔓延したら廃業して路頭に迷いかねない懸念も抱いていました。

 これまで無邪気にハクチョウへエサをぽんぽん放り投げていた人たちは、自然とのふれあいを名目にしたハクチョウ餌付け行為が、必ずしもハクチョウら野鳥のためになるわけでないという現実を認識し、野生生物のために人間はなにをすべきか、なにをしてはいけないかを、考えるきっかけにしてほしい、と個人的に思っています。