『村に生きる 杉山家のひとびと』(無明舎)

 1999年10月、埼玉から一組の新婚夫婦が、秋田県東成瀬村に引っ越してきた。

 それまでの生活を捨て、雪深い東北の山村にて自給自足に踏み切り、はや9年。自然豊かな四季のうつろいの中で、数々の失敗と試行錯誤を重ね、地域の人たちとの触れ合い、新しい出会いと別れ、生まれくる命と消えてゆく命、農業ひとすじ、東成瀬村こそわがふるさとと、ひたむきに、しかし決して無理をせずマイペースで暮らしている、そんな日々をつづった爆笑4コマ漫画&エッセイです。

 実はこの著者・杉山彰さんとあおいさんは私の友人。私の住む町でもそこそこ雪は深いが、東成瀬村はその2〜3倍は降る。バスの便は少なく、ちょっとした買い物にも車なしではかなりきつく、病院も遠い。「いったいいつまでもつだろう?」と思ったこともしばしば。実際、同じように田舎暮らしにあこがれて移住してきた人はほかにもいるけれど、秋田の過酷な気候・風土ではたいてい挫折して去っていくものだから。

 それがまもなく10年目に入り、子どもも2人をかぞえ、いま奥さんのお腹には3人目が宿る。一家はますます気合がみなぎっている。豪雪地帯であるばかりか、人間関係にも保守的なところ色濃い秋田の山村で、なぜ? そのヒントが本書に記されています。

村に生きる─杉山家のひとびと

村に生きる─杉山家のひとびと

版元http://www.mumyosha.co.jp/docs/08new/murani.html
 なお同じ著者による「田舎暮らしご馳走帖」「『時代遅れ』入門日記」も無明舎から出版されていて、こちらもおすすめ。