河川行政の今昔
いったん計画したら、その目的がどのようにコロコロ変わろうと、「造る」という結論が先にあって断固として中止しなかった旧建設省直轄ダムは、そのほとんどが不要のものだ。
住民をペテンにかけ土地収用法で恫喝して退去をせまった下筌ダム。
住宅地を秘密裏に流域内に組み込ませ住民を騙まし討ちにした徳山ダム。
工業用水目的でありながらいつの間にか治水目的となった二風谷ダム。
金金金の猛烈な切り崩し工作で歴代反対町長をことごとく追い落とし県職員も自殺に追い込まれた苫田ダムetc…。
国家が決めた事業、わけても1000億単位という巨額の税金が投入されるダム建設は、もはや決められた以上は完成まで突っ走るのが慣わしであった。
例外は細川内ダムだろうが、そんな特異な例はもうありえないと21世紀のいまは半ば諦めかけていた。そこへ意外なニュースが飛び込んできたので貼り付ける。
熊本・川辺川ダム:蒲島知事、反対 県議会で表明、計画中止濃厚に
熊本県の蒲島郁夫知事は11日開会した9月県議会で、国が同県相良村に計画する川辺川ダム計画について「現行計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すべきであると判断した」と述べ、建設中止を求めた。同ダムは国の計画発表から42年が経過する中、本体着工の見通しが立っていなかった。巨大公共事業の象徴でもある同計画は、地元首長に続く知事の反対表明で中止に追い込まれる可能性が高くなった。(後略)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080911dde001010004000c.html
一種、感慨深いものがある。あの川辺川ダムが「中止に追い込まれる可能性が高くなった」なんて。まさかそんな報道をこの目で見られるなんて…。
住民が、国民が変わったのか。それとも国家が、政権与党が、国土交通省が変わったのだろうか。
「公共事業は、法にかない、理にかない、情にかなうものでなければならない」と語ったのは故・室原知幸氏だ。室原氏が亡くなったのは1970年。あれから38年が経ち、ついにこの日がきたことを、あの世で室原氏はどう受け止めるだろうか。