落書きはダメ、破壊はOK

 世界遺産の登録が期待される平泉では、登録が微妙視されていますが、その懸念の大元というのが、しつこく書いてきた金鶏山の鉄塔です。

 由緒ある小高い丘の中腹に、東北電力がでっかい鉄塔を建てたため、視界と景観が汚されることおびただしいわけ(朝日新聞岩手版サイトからお借りした画像とリンク↓)。

http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000440804100001

 言ってしまえば東北電力は、世界遺産の価値のある自然に、落書きどころじゃない所業を働いたわけですが、違法じゃないのでお咎めはありません。そもそも鉄塔を建てたのはかなり古い話だし。

 しかし、違法じゃないからといって鉄塔建設を容認した平泉町当局と、これに反対の声すらあげなかった町民の意識の程度は、のちのちまで語り継がなくてはならないでしょう。

 要するに平泉町は、いま全町あげて平泉世界遺産登録運動を展開させているけれど、それとは裏腹に、地元の史跡遺跡に、これっぽっちも関心も誇りも抱いていなかったわけですから。

 鉄塔の存在がなによりの証拠。「なんでこんなの造らせたの? 反対しなかったの?」と聞かれたら町民は何て答えますか?

 では気になるニュースを貼り付けます。

茨城・常磐大高の落書き監督が解任
 茨城・常磐大高の野球部監督(30)がイタリア・フィレンツェ世界遺産サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」に落書きをした問題で、同校は6月30日、監督を29日付で解任したと発表した。同校によると、本人は名前を書くと幸せになるという話を聞き「深く考えずに書いた」と事実を認めている。浅岡広一校長は「心ない行為。たいへん申し訳ない」と謝罪した。野球部は昨夏の茨城県大会で準優勝し、今夏もシード校。夏の大会の出場については県高野連を通して、日本高野連の判断を仰ぐ。
(以下略)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080701-00000030-nks-base

 落書きは許される行為ではありませんが、記事を読む限り監督さんに悪質さは感じられません。

 みみっちい落書きのひとつやふたつで大騒ぎするのもいいけれど、所詮モラルの問題。責任を問われるのが個人であるかぎり、多くが糾弾する側にいられる安堵感がある。でもときどきは、わが祖国でいまも行われている、落書きどころじゃない巨大な破壊行為にも、目を向けてほしいものです。

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 以上のようなことをmixiで書いたら珍しくコメントがあり、「極論だ」「利害を考えよ」と批判をいただいた。極論もなにも、金鶏山の鉄塔問題は東北電力側も認識していて、当面は修景で対応し、将来的には移設を視野に善処するとの立場だ。つまり金鶏山の鉄塔は、解決できる問題なのである。利害がどうのというレベルではない。