文化財落書き問題についてまた

 きのうの続報。

イタリア世界遺産落書き:「厳罰」処分 伊紙「あり得ない」
 【ローマ藤原章生】「教員、大聖堂に落書きで解任の危機」−−。イタリア・フィレンツェの大聖堂に落書きをした日本人が、日本国内で停学や務めていた野球部監督の解任など厳しい処分を受けていることに対し、イタリアでは「わが国ではあり得ない厳罰」との驚きが広がっている。(以下略)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080702ddm041040028000c.html

 イタリアでは落書きが事実上“容認”されているようですが、わが祖国ではもちろん禁止されています。日本において社会的立場のある人物が文化財にキズつけたら、地位を失う場合もあるということが、ヒトラーの盟友ムッソリーニを断罪したイタリアでは驚きなのだそう。落書きひとつで日本の価値観を逆輸入されたイタリア紙が「わが国ではあり得ない」というのも象徴的です。

 でも「厳罰」ですか。

 サンゴに落書きした新聞記者も厳罰に処され、新聞社は猛烈に叩かれましたが(今もときどき叩かれている)、石垣島の新空港建設で膨大な面積のサンゴ礁をひき潰そうとした自民党政府には、どれだけ非難が集まりましたっけ? どんな罰が下されましたっけ? サンゴの傷は3〜4年でほぼ元通りになるけれど、空港建設で失うであろうサンゴ礁は二度と再生しません。

 きのうの日記でも書いた平泉の史跡ぶったぎり鉄塔群、だーれも罰されません。あれを再生させるにはどれだけの手間ひまがかかることか。マジックペンの落書きを消すのとはわけがちがいます。

 イタリア人に驚いてほしいのは、落書き漢に対する「厳罰」のごときよりも、文化財・自然の巨大大量破壊を実行してほとんどまったく問題にされない日本社会の構造であると指摘しておきます。

 「日本では、文化財に落書きすると叱られるけれど、文化財を木っ端微塵にするのは許されるんです」と。