『「もののけ姫」の秘密 遥かなる縄文の風景』

 去年、久慈力さんの『大和朝廷を震撼させた蝦夷アテルイの戦い』(批評社)を読んだものの、内容の密度の濃さに感想をかくのをためらわれ、蝦夷(えみし)を勉強するならもっと初歩からでないと駄目だと痛感させられた。

 で、高橋崇さんや工藤雅樹さんの著作をいくつか読んで、いちおう初歩の域は脱したかなとは思うけれど、『蝦夷アテルイの戦い』を批評するには程遠い。といってもいまさら論じることもおこがましい。

 ふたたび久慈さんの著作をなにか読んでみようとなり、宮崎アニメを取りあげた『「もののけ姫」の秘密』を手に取り、さっき読み終わったところ。

 いやー、こっちを先に読んでおくんだった…。前著よりはるかに蝦夷についてわかりやすく、読みやすいから。なにしろサンプルとなる対象が、あの『もののけ姫』だし。映画を観てさえおれば、各々場面ごとに、わが祖先にして祖国の先住民・蝦夷との対照が容易で、すんなりと飲みこめる。

 本書の感想は、これまた書くことがはばかられるほど、濃厚な内容となっている。したがって批評じみた真似をするのは控えよう。久慈さんと同じく蝦夷を先祖にいただく者として、必読であろう。

 ただし、単に娯楽的面白さだけを求める、純粋なアニメファン・宮崎ファンにしてみれば、不愉快かもしれない。

『もののけ姫』の秘密―遙かなる縄文の風景 (遥かなる縄文の風景)

『もののけ姫』の秘密―遙かなる縄文の風景 (遥かなる縄文の風景)