映画『靖国』さらにつづき

 前回のさらなるつづき。「たとえば『ではウチが断固上映する』というシネマが、今後どれだけ現れるだろう。せいぜい場末の公民館や○○会館といった、しょぼい集会場での草の根上映が関の山」との私の見通しは、よい方向で外れてくれたらしい。朝日新聞HPから貼り付ける。

映画「靖国」 全国21館が5月以降に上映へ

 12日に封切り予定だった映画館が相次いで上映を見合わせたドキュメンタリー映画靖国 YASUKUNI」をめぐり、配給・宣伝会社のアルゴ・ピクチャーズは4日現在で全国の21館が5月以降に上映予定であることを明らかにした。4館が見合わせた東京都内でも、1館で公開する見通しになったという。

 ほかにも検討中の映画館があり、新たに上映の打診をしてきた館もあるという。
http://www.asahi.com/culture/update/0404/TKY200804040337.html

 圧力の先頭となった稲田朋美衆議院議員(国民の意思で選ばれた国会議員)の思惑としては、在日中国人が監督するような「反日映画」(稲田議員の言葉)の日本国内での上映はけしからんということだったのだろうが、逆宣伝効果もあったらしい。「らしい」というのは、やはり限界があるから。この上映シネマ拡大の動きはたしかに喜ばしいことだけれど、興行的に採算が見込まれなければ、つまり映画を観にきてくれる客がいそうになければ、どうしたって草の根上映に頼らざるを得なくなるのは自明だからだ。

 中国映画で印象に残っているのに『南京1937』(ウー・ツーニウ監督)というのがあった。1997年に政策されたもので、原題は『南京大屠殺』(英題 Don't Cry Nanking)。あの南京大虐殺を描いた作品で、日本でも公開され、大いに話題を呼び議論を巻き起こした。これとほぼ同時に公開され、おなじく論争となった邦画が『プライド 運命の瞬間』であった。

 『南京1937』は完全なる草の根上映。わが地元では映画館なるものはなく、文化会館でこれを上映する有志がいたので、鑑賞の機会に恵まれたのだけれど、たった一日だけ。普通の映画館では、どこも継続上映などされなかった。岩手でもそうだった(『プライド』の方は、東日本ハウスという企業が全社あげて宣伝に関わったおかげで、メジャーな映画館はこぞって上映に走り、けっこうな成績をおさめたものだったが。このあたりの事情はhttp://d.hatena.ne.jp/binzui/20060626参照)。

 『靖国』もそうなるのではないだろうか。もちろんそれでも上映されないよりははるかにマシである。草の根でもいいから、一回限りでもいいから、田舎でも上映してほしい。有志の活躍に期待したい。