新風舎も事実上の倒産

 今朝の朝刊『朝日新聞』(統合版)一面をみて驚いた。そして「ついに」と思いました。自費出版業者の最大手・新風舎の事実上の倒産のニュース。全文引用します。

自費出版大手「新風舎」、再生法申請へ

 自費出版ブームで急成長した出版社の新風舎(本社・東京都港区)が7日、東京地裁民事再生法の適用を申請する。負債額は約20億円。関連会社の新風ホールディングス(同渋谷区)を合わせると25億円程度になる。新風舎によると、すでに印刷会社など2社が支援を表明しており、事業を継続しながら再建方法などを調整する。

 債権者に同社が送った書面によると、営業方法を批判する一部報道などの影響で、売り上げが急落し、債務支払いが滞ったという。今後、営業方法や経費面を見直すなどして立て直しを進める。

 同社によると、現時点で、約1100人が自費出版契約を結び書籍を制作中。同社は「制作途上の本の完成と、すでに出版されている約1万5000人の著作を含めた流通ルートは必ず守る。事業継続のなかで再建を図っていくのでご支援とご協力をお願いしたい」としている。

 売り上げの9割を占める自費出版ビジネスをめぐり、昨年には販売方法などが契約内容と違うとする一部著者から賠償を求めて提訴されるなど、トラブルも起きていた。

 9日午後に東京都内で債権者への説明会を開き、今月中旬から東京、大阪、福岡で著者向けの説明会を予定している。

http://book.asahi.com/news/TKY200801060159.html

 以前加入していたmixiの、作家志望さん向けのコミュニティで、ほかならぬ私はこんなことを書いていました(一部転載)。

 「本を出してみたい人や,本に憧れを持っている人のためにある会社,それが○○舎です」(本文では実名)

 ……ある業界通の談話としてこんな言葉も。

 「特に地方在住の作家志望の方なんかは,東京の出版社から本を出せて,それが全国の書店に並び,印税がもらえる,なんて言われたらイチコロでしょう」

 「イチコロ」になった方を私も何人か知ってますけどね…笑。

 拙ブログでもこんなことを書いてましたっけね。
http://d.hatena.ne.jp/binzui/20060412

 さて、上の一文にある「○○舎」て、新風舎なんです。本を出せば書店に並んで売れてベストセラーになって夢の印税生活が待っている……なんて、宝くじに当たるより低確率のバクチに撃って出る方々が多いものの、騙される人はあらたか騙され尽くしたようで、残るは、本を出してはみたいがどれだけ採算が見込めるものかを、冷静に慎重に分析できる人だけとなったようであります。

 新風舎の広告はいまもコンスタンスに見かけるので、業績は安定していると思われていたのが、なんと民事再生法の適用を申請、事実上倒産とは。

 知人にいました。ここ新風舎から本を出版したという方が。まったく売れなかったそうです。新風舎社員は、「素敵な小説だから、ぜひわが社から出版を」と、本を創るための営業は熱心であったが、本を書店に売り込むなどの肝心の営業活動は全くしてくれず、「あなたの努力が足りない」みたいな言葉を投げつけられたそうな。私もお義理で買い求めたけれど、売れなくて当然の、くっだらない小説でしたっけ。こんなん出版してくれる版元の意図は、本を売ることじゃなく、出版費用の名目で著者からカネを巻き上げること、それしかないだろうとすぐわかりました。

 もちろん知人は悪くありませんが、出版してから出版社への不満不平タラタラで、自責と後悔の念にさいなまれ、しばし立ち直れなさそうでしたっけ。

 自費出版を売り物にしている版元とくれば思い出されるのは、碧天舎が倒産したのはおととしでしたでしょうか。文芸社はいまのところ順調なのかな。それにしたって自費出版業界の草分けがコケちゃうってのも。記事にある「営業方法を批判する一部報道」といえば『創』とか『週刊金曜日』(↓)がありました。
639号リンクhttp://www.kinyobi.co.jp/pages/vol639/mokuji
640号リンクhttp://www.kinyobi.co.jp/pages/vol640/mokuji

 ちなみに『朝日新聞』は、2006年10月07日の別刷り紙面で新風舎の社長を破格の扱いで持ち上げてたんですよね。興味がある方は図書館あたりでぜひ見てください。

 …とまあ、なけなしをお金をはたいて「自信作」を世に問うた方々の気持ちを逆なでするようなことを書いたけれど、私自身も“自費出版”したことがあるのです。たったの100部、費用は40万円。売れたか売れなかったかは書かないでおくとして、あれからもう6年になるのか。