蝦夷の苦悩?

 自慢じゃないけれど小沢党首の奥さんと会話したことがあります。選挙がらみの連絡ですけれど。

 「巣伏の戦い」。788年(延暦7)、古代東北の先住民・蝦夷の軍勢は、数万からなる朝廷軍を撃破しました。日本史に燦然と輝くこの戦いで、1000人そこそこの蝦夷の精鋭たちを率いて勝利に導いたのが、アテルイ・モレのふたりの戦士でした。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A3%E4%BC%8F%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84

 その場所「巣伏」は、いまの岩手県奥州市(旧水沢市)。そこに育った政治家が小沢一郎さんです。

 つまり小沢さんは、蝦夷の末裔。

 かつては自民党の幹事長も務めた小沢さん、宮沢執行部に反旗を翻して離党し、新生党新進党自由党――と名を変え籍を変えながら、絶えず政界中枢に大きな影響力と存在感を示していた大物政治家でした(むろん世襲だが)。

 こないだの参院選民主党は大躍進し、来年春と目されるつぎの総選挙でいよいよ政権奪回を――と支持者も期待していたところが、なぜか福田サンとの“話し合い”で大連合の構想が飛び出て、これが党内で反発を招くや党首辞任を表明。

 急転して結局は辞任せずで決着ですか。

 アテルイとモレは蝦夷の暮らしと生命と誇りを守り抜くため、蕨刀を捨て朝廷軍に投降し、首を刎ねられました。小沢さんが自民党を離れてまもなく、ある週刊誌でアテルイに触れ、自らを「俘囚」の末裔であることを自覚し、遠い祖先の誇りを認識し、自民党政治と対決する意思を表明していたのです。

 それが大連合。

 もちろんさまざまな事情・思惑・曲折があって決断をなさったことでしょう。愛する(?)民主党の政策を実行するのには、多少の譲歩もやむなしと。

 それが党内で賛同が得られなかったからといって、なにも辞任せずとも。んで党内からは辞められちゃまずいと怒涛のような説得工作。これが功を奏して?最終的には元通りですかー。

 個人的にはこれでよかったと思います。あれこれ憶測が流れた中で、民主党として最も恐れた展開――小沢さんが腹心議員を引き連れて自民党と合流するという最悪のパターンだけは、避けられたことははっきりしています。アテルイが朝廷軍に降ったのとはまったく違う。

 でもケチがついてしまいましたね。この騒動は、つぎの総選挙を戦う際、民主党にとってよい材料であるはずがありません。

 それでもなにかひとつ前向きに考えるとすれば、参院選での大勝利に酔う議員さんや支持者は、「小沢に頼っていてはまずい」と危機感を持ち始めて、総選挙の戦術を根本から考え直すきっかけにできそうなことくらいでしょうか。