「右翼」は暴言?

土井たか子氏、出版社側提訴
 月刊誌「WiLL」が社民党元党首の土井たか子氏が朝鮮半島出身であるかのような記事を掲載したことに対し、土井氏は18日、事実に反し、信用や名誉などを毀損(きそん)されたとして、発行元のワック・マガジンズ(東京)と代表者らを相手取り、全国紙への謝罪広告の掲載と損害金1万円を求める訴えを神戸地裁に起こした。

 訴状によると、同誌は06年5月号に掲載した論文「拉致実行犯辛光洙シン・グァンス)釈放を嘆願した“社民党名誉党首”」の中で、「土井氏は知る人ぞ知ることではあるが、本名『李高順』、半島出身とされる」などと言及した。土井氏側は「事実無根の捏造(ねつぞう)記事で、土井氏に対する取材に基づかない一方的な推測で作成したものだ」と主張している。同誌の花田紀凱編集長は「訴状を見て対応したい」と話している。

 これはことし4月19日だかのasahi.comのニュースです。神戸地裁での公判はもうだいぶ進んでいると思うけれど、後追い報道がないので忘れないように書いときました。提訴されたのは雑誌社のほか執筆の花岡信昭産経新聞客員編集委員

 全国紙への謝罪広告は、訴えた側としては当然の要求でしょうが、「損害金1万円」という金額の安さは、まあ高額請求による言論萎縮を狙ったものではないという土井さんの意思の表れでしょうか。

 この裁判はどこまで進んでいるのかわからないのですが、「WiLL」花田紀凱編集長は土井さんに対する謝罪と訂正記事掲載を予定していたのが、提訴に至ってしまい、法廷で決着させることになったようです。

 花岡信昭サンは産経のエース記者だった人で、著名なジャーナリストのひとりです。保守畑の。自らの取材活動の手を緩めることなく、堂々と法廷で主張していただきたい。していると思うけれど。それで敗訴しても1万で済むのだから、怖気づくこともないでしょう。

 それにしてもこの裁判、どこまでいってるんでしょう。知っている方いたら教えてください。

「暴言で苦痛」と会社社長が森元首相提訴
 森喜朗元首相の暴言によって精神的苦痛を受けたとして、金沢市の建築会社社長(59)が22日までに、森元首相に謝罪と慰謝料160万円の支払いなどを求めて金沢地裁に提訴した。

 訴状によると、社長は9月22日に石川県小松市のホテルで開かれた小松基地航空祭前夜祭の懇親会で、日本の植民地支配と侵略を認めた村山富市首相談話をめぐって森元首相と口論になり「君なんかが口出すことではない」「右翼」などと言われ、精神的苦痛を受けたとしている。

 森元首相代理人弁護士は「当方の主張は答弁書で明らかにする」としている。
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20071023-273362.html

 こちらは最近のお話。訴えたのは民間企業の社長さんのようです。訴えられたのは、畏れ多くもわが祖国の第85・86代総理大臣・森喜朗サンです。

 短い記事から、社長さんが森サンに、いかなる精神的苦痛を受けたかを推し量るのは難しいのでやめておきますが、村山談話(国会決議ではない)について森サンに抗議でもして、軽くあしらわれたのが癪に障ったのでしょうか。

 それにしても「右翼」呼ばわりされたのが「暴言」だとすれば、この社長さんの尺度では「右翼」=謝罪要求すべき暴言=法廷で争うべき重大な問題、ということになりそうです。人殺しとか気違いとか言われれば万人が暴言と見なすでしょうから、身に覚えのない人は謝罪要求し、場合によっては訴訟も辞さぬ覚悟を示すでしょうけれど、「右翼」と言われただけ(とも思えないけれど)で訴訟に至るなんて、ちょっと理解できません。「右翼」であることを誇りにしている方々は、この訴訟をどう見るのやら。

 ともあれ精神的苦痛を受けたのであれば、精神科医がそれを証明し、裁判長がこれを認定すれば、あるいは社長さんの訴えは認められるでしょう。「“右翼”は明白な暴言であり、原告の精神的苦痛は量り知れない」とね。なんだかんだ興味深いニュースなのでこちらも書いておいたところです。