帰化生物
所用の帰路,ふと思い立って峠にある沼へ立ち寄ってみることにした。学生時代から通学でその沼のそばを毎日のように自転車で往来していたが,沼にどんな生き物がいるか,これまでろくに調べたことはない。ヌマエビがいればけっこう役に立つかもしれないし。
長靴に履き替えて沼のふちに立ち,そっと近づくと,水面を小魚がわんさとせわしなく動き回る。この様子ならブラックバスはいないな。悪質な環境テロリストがゲリラ放流を繰り返すことで問題となっているブラックバス,こんな小さな沼では密放流者は目もくれないだろう。
縁に立ち,中をのぞきこむ。……エビはいない。でもミズカマキリやミズスマシが。ヤゴもいるよ,懐かしいこと。
と,敏捷な動きで水煙を立たせる生き物が。ザリガニじゃん。アメリカザリガニ。
いるわいるわ,1メートル四方に2〜3匹はいる。タニシもやたらと多いこと。
タニシもアメリカザリガニも帰化生物だ。でもだれかが放たないとそこには存在しない生き物。ここまで殖えるとはねー。
子ども時分には,ザリガニとくれば矢も盾もたまらず捕まえにいくところだが,いまはさすがにね。ことに相手は舶来のザリガニ。秋田は在来ニホンザリガニの南限だが,外来種に押されて繁殖地が極めて限定されるまでに減っている。ここのザリガニを持ち帰って,逃げ出されでもしたら面倒なことに――ってもうとっくに手遅れか。アメリカザリガニはすでに日本を席巻している。北海道以外は。
まあザリガニの生息地ということがわかってちょっとよかった。地元の子どもに教えれば捕まえにくるヤツもいるかもね。
なんか見かけないトンボもいたので,あした捕虫網を持ってまたきてみよう。
午後から花巻へ行く用事があり,暑い中車を走らせた。なるべく冷房は使わない。窓を全開して風だけで。時に蜂が入ってくるのが困るけれど。
道路工事現場で車線入れ替えの最中に,エンジンを止めて小鳥の声を聴いてみる。オオルリが鳴いていた。方言の豊かな小鳥だ。メジロと競演していた。ときにヒヨドリも。
花巻の山間部ではコルリも鳴いていた。コマドリに似た,テンポのよいあの調子で。空にはチゴハヤブサが舞っている。
横手市山内から岩手県西和賀町の鉄道の北上線で,なんかカメラ機材を抱えた写真家さん連中があちこちに陣取っていた。きょう北上線で蒸気機関車が走るらしい。時間があれば俺も撮ってきたかったなあ。