「愛国者」ミサイルPAC3
http://d.hatena.ne.jp/binzui/20060705
去年7月5日の日記「北朝鮮を“擁護”してみるかな」で,私はふたつのことを報告?しました。
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル発射の騒動に隠れるように,在日アメリカ軍がこんなことをやっていたのです。
① 青森県つがる市に高性能レーダー「Xバンド・レーダー」配備をしていた。
② 三沢基地に地対空ミサイル・パトリオットPAC3(パック=スリー)が国内にて初めて配備された。
このたび,航空自衛隊入間基地(埼玉県)に国内向け初の地対空誘導弾が配備されましたね。アメリカ軍三沢基地のとおなじ「パトリオットPAC3」です。先の日記でも書きましたが,これまで日本には外から飛んでくるミサイルを迎え撃つ手立てがなかったんですね,意外なことであります。
日本政府をこころよく思わない国,言ってしまえば日本を嫌いな国がないわけじゃないから,もしかしたら日本の国土めがけてミサイルを撃ち込んでくるかもしれません。それを防ぐにはどうすべきか?
たとえば東京あたりにミサイルを撃ち込まれたら大変です。なんとかしなくては……というわけで,このパトリオットなるミサイルが,晴れて配備の運びとあいなりました。首都防衛はこれでひと安心。
と思います?
実際はどうもそうじゃないみたいです。憲法論議はこのさい措いときましょう。某国があすにもミサイルを撃ち込むかもわからんときに,集団的自衛権だのなんだのと悠長なことは言ってられませんでしょうから。
さてこのパトリオットPAC3,いかほど効果があるものでしょう? ちょっと『東京新聞』のリンクみてください。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070331/mng_____tokuho__000.shtml
全文貼り付けることはできないのですが,一部だけコピペ。
「現在、日米共同で配備しているPAC3や海上配備型迎撃ミサイルSM(スタンダード・ミサイル)3は『破れ傘』。空中で各方向に分離する現在のミサイル弾頭すべてには対処できない。守る対象は首都中枢や米軍基地に限られる」
実際、青森県の空自車力分屯基地に配備された米軍のXバンドレーダーは角度を米本土防衛用に上方に設定しており、昨年七月に北朝鮮が撃った七発のミサイルは捉(とら)えられなかった。
『破れ傘』ね。つまりミサイルが飛んできて迎え撃っても,撃ち漏らしちゃう恐れが高いというわけですか。
その確率,迎撃が成功する率はどのくらいかというと,記事には「四、五割しか当たらない」って…。半分いくかいかないかですか。10発飛んでくれば5〜6発は着弾してドッカーンと。
地対空ミサイル「パトリオットPAC3」――ないよりはいいのかもしれませんがね……。でも,こんな当てにならない防衛システムにカネかけるよりは,日本をこころよく思わない某国と話し合いして,両国の間柄をすこしでもよい方向へ持っていった方がずっと現実的ではないでしょうか。カネもかからないし。普通の感覚ならそう思いますよね。
日米の国防族、軍需産業の要人が会する「日米安全保障戦略会議」の第八回会議(東京・昨年八月)で、三菱重工航空宇宙本部の西山淳一氏は「北朝鮮のミサイル発射によって、この間の対処などを再検討する必要があるのではないか」と発言。結果は言葉通りになった。
国防族・軍需産業ね。カネのかかることは大歓迎という種類の方々が陣頭を取っていて,世論もこれに従っているようでは「話し合い」は不可能か。
記事の注釈で初めて知ったのですが,パトリオットとは「愛国者」を意味するんだそうです。役に立たない愛国者。役に立たないモノにカネをかけ,役に立たないモノを配備するんですよニッポンという国は。笑い話じゃないマジな話。
しかし国防族や軍需産業からすればまさしくパトリオット(愛社精神の塊)ですな。天下り先を確保し,その会社を潤してくれるのだから。アメリカでさえもこんな役立たずミサイルにカネをかける理由はそこにあります。構想から撤退したカナダはいくぶんマトモのようですが。
みなさんも「パトリオットPAC3」のような役立たずのパトリオット(愛国者)になる?
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ついでに『東京新聞』記事の間違いも指摘しておきます。「青森県に配備された米軍のXバンドレーダーは…昨年七月に北朝鮮が撃った七発のミサイルは捉(とら)えられなかった」とありますが,Xバンドレーダーの運用は12月からなのでした。運用前に飛んできたミサイルを取りこぼすのは当たり前です。