個人情報て

 まとまった金を下ろそうと銀行へ行った。

 払い出し伝票に通帳を添えて窓口に出すと、女性行員に「百万を超える金額を引き出す場合は、身分証明書を出してもらいます」と言われた。

 「以前にもそう言われたし、コピーも取られた」と言うと、「その都度出してもらう規則です」と返された。

 「面倒なんですけど」とゴネたが「規則なのでご理解を」だと。

 しかたなく車にもどって運転免許証を持ってきて、差し出した。

 やはりコピーを取られた。

 郵便局でも同じことを言われたことがあり、機嫌が悪かったわたしは、女性局員に「では“免許証コピーは業務以外には使用しません”と一筆入れてほしい」と要求したことがある。

 局長らしき男性が出てきて拒否されたが。

 きょうもあまり機嫌がよくなかったので、わたしは彼女にこう聞いてみた。

 「貴女が首に提げてる身分証明書もコピーさせてもらっていいですか?」

 「出来ません。不正使用される恐れがありますので」

 「コピーには応じられないと?」

 「はい」

 わたしは彼女を信じて免許証を差し出し、コピーも容認した。そこまでしても、彼女はわたしをまったく信用してくれないのであった。わたしはなんのために免許証を差し出したのだろうか。

 もちろん、銀行側や女性行員が、わたしの運転免許証コピーを不正使用する可能性はないだろうが、顧客が彼女の身分証を悪用する可能性は、銀行や彼女は、あるとみているのが実情なのだ。当たり前のように客の身分証のコピーを取り、当たり前のように客からのコピー要求を突っぱねる姿勢に、それが証明されている。

 個人情報保護法とやらが成立して7年になるが、個人情報の何をどう守るのか、よくわからん。彼・彼女らが守りたいのは組織であろう。