雨に濡れても

 夜更け、帰ろうと思って外へ出たら、雷が鳴って雨が降ってた。

 土砂降りではないけれど、これは濡れずに行くことは無理っぽい。

 自転車なのである。

 宿舎までは1キロ足らずだが、国道4号を越えなくてはならないので、そこそこ手間がかかる。

 いいや、夏だし、薄着だし、濡れてもいいや。

 肩、ズボン、すぐにびしょ濡れ。髪も濡れて額にへばりつき、したたる水が目にも入ってくる。

 メガネも水滴で視界不良。

 懸命にペダルをこぐが、全身ずぶ濡れになるにつれ、どこか懐かしい気持ちになってきた。

 そうだ、高校時代は自転車で通っていた。

 雨が降ろうが、夏にバスに乗るのは軟弱。どんな土砂降りでも、雨合羽を着こんで、片道10キロの道を走ってたっけなあ。

 そう、あのときの気持ちだわ。

 雷鳴がとどろく。

 こんなに濡れたのは何年ぶりだろ。