鳩山首相、退陣にさいして

 昨年秋の総選挙で民主党が大勝し、戦後、長々とつづいていた自民党の支配体制が崩壊して、初めて純粋な非・自民党政権が誕生し、当初は支持率70%を超えていたのが、日に日に低下してついに20%を割り込み、まさかの退陣表明は、青天の霹靂でした。

 支持率低下の理由は首相本人も言っていたし、あらゆる層が指摘しているとおりでしょうから、わざわざ私が触れる必要はないでしょう。ただ、この一年足らずの間で、鳩山体制をめぐる世論の移ろいは、実に“水もの”だな、とずーっと思っていました。

 個人的には、鳩山さんにはもっと踏ん張って欲しかったです。人柄は温厚だし、厭味ったらしさもないし、エリート風も吹かせない。カネにまつわる話は出ていても、人格にからむ浮いた話は皆無でした。小心者っぽい部分はあっても、いつも端然・淡々としてて、これといった特徴のない性質。それがマスコミの癪に障ったのかもしれません。

 また、世論の動向も、実に冷酷で無情でした。閣僚や党幹部や議員の不祥事が起これば、すわ首相の責任論へ持っていくのはどうかと思います。政権交代して日が浅いにもかかわらず、目に見える実績を要求し、即効性まで求めるのは行き過ぎではないかと。それが実現できないと見るや、宰相失格とばかりに責め立てて、失望した、こんなはずじゃなかったと落胆するのは早すぎじゃないでしょうか。

 自民党政権は、じつに50年も続きました。汚職政治家・天下り官僚・癒着業者の支配体制が、半世紀もこの国を牛耳ってきた。かの「八ッ場ダム」や「事業仕分け」でその一端を垣間見ることができたものの、あそこまで我が国の政治はドロドロに腐っていたのです。そんな国を、半年や一年足らずで修復できるわけないのに。そんなに慌てずとも、そんなに期待をかけずとも、長い目で見てあげられないほど、有権者はゆとりのない方々ばかりなのでしょうか。

 ともあれ鳩山さんは自らの意思で職を退きました。いまはお疲れ様と申し上げるのみ。後任にどなたが就くにせよ、自民党政権時代の腐敗大掃除の手は緩めないでほしいと願っています。