『アバター』観てきた

 昨年末から話題の3D大作映画『アバター』(ジェームズ・キャメロン監督)を観た。予告編から気になっていたけれど、なんとあのタイタニック(同じ監督)にせまる勢いで興行収入を伸ばしているそうだ。

 ターミネーター4のサム・ワーシントン、エイリアンのシガニー・ウィーバーら、知っている俳優も出演して、世界的に大ヒットしている大作、3Dとやらの醍醐味を最大限に味わうために盛岡のシネコンで、23日(土)に観てきた。公開直後は混み合うだろうからひと月ばかり我慢していた。

 3D映画を観るのは初めて。6年前に埼玉の遊園地で3D遊戯(映画と可動式座席のセットのやつ)は経験あるが、あのときは酔ってしまったのであまりよい思い出はないけれど、体調さえよければ大丈夫だろう。メガネの上に3Dメガネではという不安もあったが、スクリーン入口で配られたメガネをかけると、思ったほど負担にならなかった。私は鼻が低いからちょくちょくメガネを押さえなければならなかったが。

 いやー圧巻でしたね。奥行きのある映像、これが3Dか。スクリーンから槍や銃口が飛び出してきそう。放たれた催涙弾を避けかけてしまいましたよ。これはやはり2Dじゃだめ。3Dシネマを選んで大正解でした。公開から一カ月経っているのに、土曜の夜とあって館は半分以上の入りだったし、前席はガラガラだったけど半分から後ろのほうはほぼ満席だった。あとで知ったけれど3D映画は後ろの方に座るのがいいんだとか。それと、普段は洋画は字幕版を観るのだけれど、3D字幕は読み取りがキツイとも聞いていたので、今回は例外的に吹き替え版。

 映像美はもはや神の領域。といってもほとんどCG(コンピューター・グラフィック)なのだろうが、衛星パンドラの美しさは世界遺産級です。つくりもの・想像上の産物とはいえ、モデルはどこなのでしょう? ニュージーランド? ニューギニア

 観ていて浮かんだのが宮崎駿アニメ。ジェームズ・キャメロン監督は、実は宮崎アニメのファンなのだそうです。そういえば設定や映像がよく似ているんですよね。人間(地球人)が生身では生きられないパンドラの世界は「風の谷のナウシカ」の腐海とそっくり。そこには蟲や古代獣が棲んでいて腐海を守っている。森の中の巨大な樹木は「もののけ姫」の世界と酷似していて、神と交信しつつ先住民が平和に暮らしているところもそう。狩りで仕留めた獲物をいたわる場面なんか、日本のマタギアイヌと瓜二つでしたし。

 そんな星へ、ジェイク(サム)がアバターという分身で先住民“ナヴィ”になりすまして、星の資源を狙ってやってきた。ジェイクはナヴィと交流するうち、地球人を裏切ってナヴィの側に立つことを決意し、ついに地球人と全面戦争に打ってでるという筋書き。

 ネタバレは避けるとして、いろいろなことを想起させられた。

 コロンブスの侵略に立ち向かったアメリカ先住民(インディアン)、マゼランの侵略に立ち向かった南米インディオやフィリピン、アメリカ帝国主義の侵略に立ち向かったグアム・ハワイ・シンガポール先住民、漢人の弾圧に抵抗するチベットら。日本においては、和人の侵略・弾圧に抵抗をかさねたアイヌがいる。そして忘れてはならないのが、古代東北において渡来大和人に抵抗したわれらが蝦夷――。

 それら被侵略者とナヴィが二重写しになるのである。しかしナヴィは、地球人による懐柔・買収・切り崩し・脅迫を一切はねのけた。夷をもって夷を制すという古今東西の先住民対策を、完全無力にしたキャメロンのスタイルは凄いと思った。

 ナヴィは侵略者どもに対し、最終戦争に踏み切る。ヘリコプター・ガンシップに最新の重火器を装備する地球人に対し、ナヴィの武器はほとんど弓矢のみ。地の利はナヴィにあるが、戦力の差は埋めがたい。全滅覚悟で対決に打ってでるナヴィ…。

 その後の展開は省略するが、まるで日本史を飾る合戦「巣伏の戦い」や、世界史に輝く「マクタン島の戦い」を連想させるのであった。

 映像美・設定・人物像、それぞれが見事に融和して、ほとんど芸術ともいえる名作を完成せしめた。CGというのはどこか興ざめだし、3Dのコケオドシも考えものだが、そうしたのを割り引いても、これは記録に残る映画だと認めざるをえない。

 2Dでも十分楽しめるそうだけど、可能なら3D映画館でどうぞ。