歯医者のこと 親不知抜歯

 きょう、歯医者へ行ってきた。いつもの定期検診の一環だけど、歯医者ネタはけっこうたくさんあるので、シリーズでお伝えします。

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 もう12年くらい前から歯医者へ通っている。

 歯医者じたいは子どものころから行っているけど、例にもれずの歯医者嫌いなので、途中で行かなくなったり、痛みが治まればもういいやとなってそれっきりであった。

 深刻な問題が出てきたのは、20歳代後半あたりから。

 親不知(おやしらず)である。

 下顎の左右の奥歯の、さらに奥、歯グキの中にちょっとだけのぞいている、歯。20歳あたりから気になってはいたが、放置したままであった。

 歯なのに大部分は歯グキに埋まっているので、モノを噛むことはできず、なんの役にも立たない。それが、前の歯を押し込むようになっているのと、隙間に詰まった食べ物のカスが取れないため、炎症の原因となって疼きだしたのである。

 我慢していたが、ものの本には「抜いたほうが無難」とあった。

 意を決して、かかりつけのP歯医者にて左右の親不知を抜いたのは、たしか27歳くらいのころ。

 大変だった。レントゲンで見たときの衝撃。ほとんど真横に生えていたから。

 女の子の衛生士さんに思わず聞いてみた。「これって、簡単に抜けます?」

 「さ、さあ、先生に聞いてみないと…」と、そそくさと離れていった。

 そしてP先生登場。

 「これを抜くには、骨を削らないといけない、2日は炎症(腫れ)がつづくから仕事は休むように」

 すっかりビビってしまった。

 だからその日の抜歯は取りやめた(笑)。様子をみますんでいいです、と。

 でも我慢は続かない。半年くらい悩んで決心し、ふたたびP医者へ。

 もう抜いちゃってください、と言い、腹をくくって麻酔摂取。

 対象は左側の、ほぼ全体が歯肉に埋まっている難敵である。

 麻酔が効いたころ、先生が座り、ひとこと。「じゃあ始めるよ、時間かかるからね〜」

 「メス」

 初めて聞きましたね、医者が「メス」と言うセリフ。

 まあもちろん痛みはないが、医者の呼吸音や器具の音、唾液を吸い取るバキューム音、その他もろもろの状況が、いまも記憶に残っている。

 かれこれ15分くらいの施術で、ミシミシ、ガギガギっていう感覚が、下顎から脳天に響いた。

 どうやら無事、抜歯できたらしい。

 「針と糸もってきて」と医者。縫合ですね。

 30分くらいで手術完了でした。

 下顎左の8番臼歯、これにて陥落す…。

 治療テーブル?の上に置かれたわが分身、想像以上にでかかったですよ。

 こいつが俺を10年以上も苦しめた歯か、と。

 痛み止めの錠剤もらって帰りました。自宅に帰って麻酔切れてからが、えらいしんどかった。ずっと寝込んでました。

 それから2年くらい経って、こんどは右の親不知を抜いた。こちらは左ほどは悪さはしなかったけれど、やはり左右のバランスを整えるべく、抜歯を決行したわけです。直後のしんどさは、前回と変わらなかった。

 私の場合、二度とも日帰りで済んだけど、なんか親不知抜歯は、大学病院とかで泊まりながらっていうケースが珍しくないらしい。そういう点では、楽だったのかもしれない。