『三平』不振

 鳴り物入りで公開された『釣りキチ三平』の興行が振るわないらしい。ある筋の情報ではこんな感じ。

 公開〜4/5 釣りキチ三平東映) 128,067,000円

 3月20日の公開から二週間以上過ぎて1億ちょい。やばいくらい人が入ってない。私が29日に観に行った大仙市のシネコンでは、そこそこ客がいたようだったが(といっても200人は入れる客席に30人ほど。矢口さんの地元に最も近い映画館でさえこのありさま、と言えないこともない)。

 公開直後三日間は、もっとも人の入りが激しいとき。それを含めてこの程度では、どうもコケたと言う以外になさそう。

 前作『おくりびと』は、すでに収入50億を突破、いまも継続上映が行われていて、先週までベスト10にランキングされていた。米アカデミー賞オスカーという海外の評価が逆輸入され、映画の善し悪しを外国人に判定してもらえないと映画館に行けない、羅針盤なき日本人が後押ししているのだろうけれど。

 しかし、同じ監督の最新作である『三平』は、一度もランク入りしなかった。ありゃりゃ。

 いくつかの映画評を探したが、個人ブログや匿名掲示板以外で、まじめに『三平』を取り上げているところはホント少ない。名のある映画評論家は、どうも『三平』を度外視しているような感じ。観るには観たが、論評するに値しないってことだろうか。

 『三平』は『おくりびと』効果もあって、海外30カ国からオファーが殺到したという。カンヌ映画祭へもマーケット部門で出展が決まっている。今後、海外の評価が上昇すれば、世界の映画人をうならせた作品なら、ひとつ俺も観てみようか……と思う日本人も増えるだろうが。

 カンヌの基準は、たしか社会性・啓発性・芸術性だったろうか。単に面白いとか、安っぽい娯楽向けは除かれ、こだわりの作品、とくに「才能」を重視する傾向が高く、世界的にまだ名の知られていない、過去に例のない独特な映画を創る新人を発掘する点に審査が向けられると聞いた。われらが『釣りキチ三平』は、それらの基準を満たすだろうか。カンヌの映画人たちは『三平』に、他の映画にない、キラリと光るものを見出してくれるだろうか。

 それで首尾よく「カンヌで大絶賛!」となり、日本でブレイクなんてことになれば、またしても笑える日本的現象が繰り返されるわけだが。