国辱ですか

 旧東京中央郵便局の再開発問題――簡単に言えば、古いモダンな建築である旧東京中央郵便局の局舎を、壊すか残すかということ。改築中の現場を見た鳩山邦夫総務相はテレビでこう語っていました。

 「利益追求のみで重要文化財級のものを壊していいのか。国辱ものだ」

 ほほう、国辱とな。鳩山総務相は以前にも「トキを焼き鳥にして食べるような話だ」と吐き捨てたとか。

 そしてきょうのニュース(時事通信)ではこんなコメント。

 「トキが死んでもはく製が文化財として残るような保存方法を求めたい」

 旧東京中央郵便局の歴史は1931年(昭和6年)完成だから78年ですな。

 私のとこから車で一時間たらずの場所に、太古から手付かずの原生林があり、そこでいま巨大開発が行われようとしていますが、それはどうでしょう。

 どのくらいの歴史があるかというと、正確にはわからないけれど、4000年はくだりません。78年どころじゃないのですが、そっちは国辱じゃないんでしょうか。

 トキを焼き鳥にして食べるようなもの? こりゃまた低次元で、わかりやすい比喩ですね。

 別にトキを焼き鳥にして食べてもいいと思いますよ。殖やそうと思えばいくらでも殖やせるでしょ。実際、わが祖国のシンボル鳥のキジなんか、人工的に繁殖させて放鳥して撃って食ってるんだから(国鳥を食う国は世界で唯一ニッポンだけだったりする)。

 で、鳩山さんは、トキが大事なんですか? トキが生きられる自然はどうなんですか?

 東京中央郵便局は、日本の郵政事業に大きな貢献をしていたことはわかるし、その建築様式が、日本の技術の粋をあつめた誇るべきものであること(といっても西洋のサル真似)も認めます。しかし、4000年もの間、祖先からなる日本人の生命と文化を産み育んできた自然が、どれだけ私たちにとって大事であったか、想像できますか?

 東京中央郵便局なんかなくっても郵便局員は仕事できたでしょうが、私がいま注目している原生林がもし存在していなかったら、私たちも存在していなかったのですよ。「利益」なんて次元じゃありません。

 東京中央郵便局局舎の解体と自然の破壊、どっちが国辱でしょう。

 たぶん鳩山さんは、骨董趣味がおありなんでしょうね。マニアックなんでしょうね。旧東京中央郵便局局舎に象徴されるモダニズム建築が好きなのであって、モダニズム建築が産み出された背景には関心をお持ちでないのでしょう。トキというレア種に目を輝かしても、トキが生きられる自然にはなんの興味もお持ちではないでしょう。

 この程度の人物でも日本は国会議員となれるし、その一字一句に影響力があり、手軽に報道される。それがわが祖国なのです。