『おくりびと』ロケ地にぎわう。『釣りキチ三平』ロケ地は…

 映画『おくりびと』のロケ地を訪れる見物客・観光客が急増しているというニュースは、いろいろ考えさせてくれる。アメリカ合州国映画界のアカデミー賞効果といってしまえばそれまでだが、べつに観光地でも名勝でもなく、たいして歴史も風味もない、一映画のロケ地にすぎず、地元の人にとっては当たり前の風景が、一躍、世界に名だたる名所になってしまったのだ。とりあえずニュースをひとつだけ貼っておく。

おくりびと」のロケ地が人気 山形庄内地方に受賞効果
 米アカデミー賞外国語映画賞を獲得した「おくりびと」の舞台、山形県庄内地方でロケ地を訪ねる観光客が急増。現場をツアーに組み入れようとする旅行会社も次々現れ、映画にちなんだ商品が大売れとなるなど“受賞効果”に沸いている。
 俳優本木雅弘さん演じる主人公が旧友に再会するシーンなどで使われた鶴岡市の銭湯、鶴乃湯。
 番台に立つ三谷享子さん(67)は「撮影話があったのは経営難で閉店を考えていたころ」と言うが、今では観光客がのれんの前で記念撮影し、他県からわざわざ入浴に訪れる人もいる。三谷さんも「映画をきっかけにいろいろな出会いがあった。もう少し頑張ろうと思います」。
(後略)
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030101000322.html

 実写映画にはロケーションが当然ながらつきもので、町おこしにと誘致をめざす自治体もある。滝田監督がなぜ庄内地方を選んだのかはわからないが、『おくりびと』の舞台として、庄内が最適であると判断したことは間違いない。そしてその思惑は、予想以上に当たったことも証明された。

 さて、滝田監督の最新作は、まもなく公開される『釣りキチ三平』である。

 言うまでもなく『釣りキチ三平』は、漫画家・矢口高雄さんの代表作。『釣りキチ三平』の舞台が秋田で、矢口さんの出身地でもあることも、知らない人は少ないだろう。だから滝田監督は、ロケ地に秋田を選び、ほぼ全編を秋田で撮り終えたという。

 『釣りキチ三平』も仮にハリウッドをうならせる出来映えとなり、世界的に大ヒットしたら、ロケ地めぐりの観光客が秋田へ押し寄せることも考えられるわけだ。

 だが、ひとつ大事なことを指摘しておこう。

 矢口さんの出身地は、旧平鹿郡増田町(より古くは旧雄勝郡西成瀬村)で、いまの横手市増田町だが、滝田監督は増田町を、ロケ地として1シーンも使っていない(らしい)。

 なぜか。

 その答えは、映画『釣りキチ三平』を鑑賞してから書こうと思う。
 追記:増田町でロケが行われなかった理由