曇り空の県都
思えば12年前か。まさかこんな日がくることになろうとは…。
* * *
待ち合わせの8時半をすぎ、車3台に分乗して、秋田市へ向かう。日差しは雲に完全に隠れ、風もあって寒い朝だった。雪はないものの雨が降るという予報。
定刻をやや遅れて目的地に着く。すでにマスコミが待っているらしい。あわただしく担当部署へ行くと、オフィス入り口の廊下で報道陣がカメラをむけて待ち構えていた。フラッシュが焚かれる。
担当者のデスクへリーダーが書類を提出。数分ほど要旨を述べ、受理を促す。担当者は淡々と応じ、検討する旨、答える。それを取り囲み撮影するマスコミ。
これで序盤の作業は終了であった。
記者会見場へ移動。
ひろいテーブルに椅子が5客ほどが、私たちの席。その中央にマイクが3本。額を接するほどの近距離に、やはり報道陣。テレビカメラが4台も。県内のメディアが勢ぞろいだ。ひろいテーブルと書いたが、やたらせまく感じる。
去年夏に取材を受けた記者が私を見つけ、声をかけてきた。彼も同席していたと知って、ちょっぴり緊張が緩む。
幹事社?が口火を切り、記者会見がはじまる。
趣旨を訥々と述べるリーダー。無表情に聞き入る記者たち。パネルをかざして説明し、事業の是非を問う。他のメンバーも口をはさみ、道理を問いかける。
ひととおり説明を終え、質問を受けるが、どうも記者の呈する疑問は的外れというか、本質からかけ離れているような気がする。
こんなもんなんだろうか…?
おおよその時間が経ち、記者会見は終わり、個別の質問事項に切り替え、散会となる。
未知の記者のひとりが声をかけてきた。拙著を購入してくれたらしい。お礼を言い、現地調査のさいは協力を惜しまぬと答える。
昼食だ。メンバーが人数分のおにぎりを持参してきてくれてて、それをみんなでいただくことにする。議員のひとりが会議室を提供してくださり、甘えることにする。
歓談しながら食事。議員にもおにぎりを差し上げる。
午後。在庁する議員はじめ、各会派を訪問し、今回の行動への理解を求める。みな好意的であった。すくなくとも表面上は。
別行動してたリーダーは、さきほどの担当者との詰めの折衝から戻ってきて、手ごたえがあったことを報告。一同、安堵の表情を浮かべる。
これで関門は突破したと。
あとは帰るのみだ。
私の役目はこれといって何もなかったが、それなりに意義はあっただろう。
思えば12年前か。
まさかここまでくるとは。こんな日がくるとは。