男の子育て

 『河北新報』(東北統合版)の連載「かわいくて大変 男の育休 迷走記」を読んでいる。いまではさほど珍しくなくなった男性育児日記だけれど、これを書いているのが中島剛記者なのである。

 中島記者は、10年ほど前に秋田の地方支局に勤めていたとき、転勤前に大型連載ルポを発表した。河北新報は東北ブロック紙だが、本社のある宮城以外では発行部数が少なく、さしたる反響はなかったが、ルポの着眼点や切り口に、私は度肝を抜かれてしまったのだ。同時期に秋田に勤務していた全国紙記者も「あのルポには、やられたと思った」と称えていた。

 中島記者が秋田を離れてから、彼の記事に接することはなくなったが、中島ルポは、私にとって大いに刺激となり、ずっと頭から離れず、おととし拙著を出版するきっかけとなったのである。

 中島記者とはいまも面識はないけれど、機会があれば話してみたいと思っていて、3年前に、拙著出版にさきがけて、くだんのルポの引用を願いでた際、電話で初めて言葉を交わした。10年も前のルポを引っ張り出されて突然の照会に驚きながら、いくつかの支局勤務を経て、いまは本社の報道部で、遊軍記者として活躍している、と話していたと記憶している。

 「かわいくて大変」は、医学生でもある奥さんに代わって育児休暇をとり、子どもの世話に追われる日々をつづったもの。連載が7回?だかしかないのが不満だが、あの敏腕記者が、オムツ替えや授乳で右往左往している様子が目に浮かぶ、ほほえましい日記となっている。

 可能であれば、中島記者の過去のルポを、本作も含めて書籍にまとめて出版してほしいものである。