花火遠く

 田舎の夏を送る花火が途絶えた。

 私の住む町にも里帰りの人たちがやってきて、そして夏とともに都会へと去っていく。盛岡からの帰路、家が近づくと花火があがっていた。

 仕掛け花火などという大掛かりなものではない、ありふれた花火だ。花火大会なんて行われないが、ささやかな花火で行く夏を惜しむのが地元のお盆の、毎年の配慮である。近隣の市町ではけっこうな規模のお祭りがあるけれど。

 先週、テレビ局記者から連絡があり、こないだの取材は今週中に放送する予定だという。俺の間抜けづらがさらされるのか…県内ローカルなのが幸い。どんな談話を語ったか忘れたが、緊張したわけでもなかった。前面に出ることを恐れず、たいがいに観念しないと、と思って取材を受けたのだし。まあ趣旨どおりの内容に編集して、こちらの意に添って放映してくれればと思う。

 あの日、取材がすんで、記者さんとこう話した。

 「来年は泊りがけでいきましょう」

 記者さんにはぜひ、あの自然をお見せしたい。とともに、あのすばらしい自然の核心部を映像に残し、後世に伝えたい。

 可能かどうかは不明だけれどね。俺自身、山中テント泊まりでのフィールド調査はやったことないし。

 これもまた運命と。いや、義務であり責任であると。