三平くんが実写映画に

N川源流K沢


 私とほぼ同郷の有名漫画家・矢口高雄さんの、あの名作が映画化されるそうな。アニメじゃなく実写で。秋田の郷土紙『さきがけ』から転載。

釣りキチ三平」映画化で県内ロケ 三平役は須賀健太さん
 漫画家矢口高雄さん(横手市増田町出身)の代表作「釣りキチ三平」の実写映画化が、決まった。今月中にロケ撮影が始まる予定で、湯沢市横手市など県内数カ所で撮影が行われるという。
 東映が制作、配給する。監督は、「陰陽師」「バッテリー」などの作品がある滝田洋二郎さん。三平役は「ALWAYS 三丁目の夕日」に出演した須賀健太さん、三平の祖父一平役を渡瀬恒彦さん、魚紳役を塚本高史さんが演じる。公開は来年春ごろの見通し。
 (後略)
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20080711h

 マジですか。あの三平くんがリアル画像で活躍するのを見られるのですな。マジなのですな。

 楽しみではあるけれど、どこか複雑な気持ちだ。矢口さんの作品はみな大好きです。なぜなら矢口作品は、どれも自然と人間とのかかわりを通じて、東北はじめとする日本の地方の文化を、作中に忠実に投影し、ヒューマニズムと自然界との密接な関係を、きわめて正確に描いているからだ。似たような漫画をかく作家を、矢口さん以外に私は知らない。

 「釣りキチ三平」はもちろん、「マタギ」「おらが村」などなど、どれもいきいきとした人物像が描かれている。その底流にあるのは、私たち人間を生みはぐくんできた自然に対する畏敬の念なのだ。

 だから矢口さんは、日本で数少ない、ホンモノの創作家であると、私は自信をもって言えるし、そんな人物を輩出した郷土に生きていることを誇りにも思ってもいた。

 ただ…。

 ときどき矢口さんに対して違和感というか、疑問を覚えることもある。この偉大な漫画家の実像といえるマイナスのウワサを、ほうぼうで小耳に挟むことがあるからだ。

 一例としては、秋月岩魚さんという写真家が出版した『警告! ますます広がるブラックバス汚染』(宝島社)だ。矢口さんが、ブラックバスという獰猛な外来魚の日本の内水面への侵食に、漫画を通じて一役買っているという残念な事実である。詳しいことはここでは書かないけれど。

 それ以外にも地元(旧増田町)にいれば、あまり誉められた内容じゃない話も聞こえてきたりする。まあ本質的でない瑣末なものだけれど。私も過去に、講談社の担当者を通して矢口プロの所在地を教えてもらい、矢口さんに手紙を二度ばかり送ったことがあった。返事はもちろん、いただけなかった。

 何より、もっとも大きな問題は……いや、ここに書くのはよそう。

 釣りキチ三平、映画化か。作品が完成し、上映されるときは、必ず観にいきたい。すばらしい映画となり、大ヒットすることを、いまは心から願っています。