青森の思い出 食の楽しみ

 もう15年も前、青森市にオフィスができて、月に一回は出張があった。郊外の原別というところで、二階からは八甲田連峰、背後には原別港という小さな港が広がり、陸奥湾と八甲田の眺望がよく利いていた。

 地元の事情がよくわからないころ、食事は近くの食堂で済ませることになっていて、まだコンビニが少ない当時、車で食堂屋を探し出すのは一苦労だった。

 一ヶ所、小さな食堂を見つけ、そこでチャーハンを頼んだ。

 いままで食べたことがないくらい、まずかった。味噌汁もゲロまず。店主、ありあわせの材料でテキトーにつくったんじゃねーかと思った。実際、昼時なのにそこには自分以外客はいなかったし。

 それでも付近にはそこしか食事できる店がなかった(というか見つけられなかった)ので、2回ほど入ったけど。

 ほどなくあちこちの飲食店を知ることができて、青森出張での食の楽しみがひとつずつ増えていくのがうれしかった。

 オフィスから市内寄りの一角にバスの営業所(東部営業所)があり、そのはす向かいに魚屋があった。そこでは飲食もできるらしく、あまりきれいな店構えではなかったけれど、夕食にと入ってみた。

 品書きはやはり魚料理中心。刺身定食が1000円だったと思う。それを頼んだ。

 一人で切り盛りしていた若い女の子の店員さん、注文を告げると調理場へ行く前に魚の売り場へ行って、陳列している魚からひょいひょい持っていくではないか。

 おお、売り用の魚を料理して作ってくれるのか、とちょっぴり感激。

 あまり時間かからず、大盛りのご飯と味噌汁におしんこを添えて出てきたお刺身のてんこ盛り…。

 たしか8種類くらいあったような気がする。刺身だけで8種。

 小ぶりのアワビ、包丁いれたてでまだウネウネ動いてたですよ。ほおばるとコリコリしてて独特の舌触り。

 いやーどの刺身も新鮮そのもの、美味いなんてもんじゃなかった。

 知らない土地の知らない味を賞味できる。出張にはけっこう楽しみがあったりする。

 青森オフィスは3年半でたたんでしまったが、間欠的に思い出を書いてみようと思う。