須川温泉へ

残雪のブナ


 長い冬ごもりがやっと終わった栗駒山の名湯・須川高原温泉へ行ってきた。半年ぶりの営業再開に合わせ、この連休を利用して。

 いい天気だった。亜高山はまだ春を迎えたばかりで、木々の芽吹きもこれからというところ。ふもとではもう新緑真っ盛りで“春紅葉”状態だというのに、標高が高くなるにつれ裸木が濃くなり、須川高原はまだやっと春のお目覚め。

 残雪の中に林立するブナの美しいこと。青空を背景に一枚アップ。

 それにしても……視線を変えればあるわあるわ、国定公園内に広がるスギ・カラマツ植林地――。

 悪名高い拡大人工造林計画の影響で、かつての乱伐のなごりの伐採跡地がいまもそこかしこに残る高原だが、国策の名のもとに行われた蛮行もいまは昔。自民党政権がやらかした山村虐待政策は東北の山々をズタズタに引き裂いたけれど、まだまだ豊かな自然は健在である。

 この自然は後世まで、遺し伝えなくては。

 ――と思いつつ、ケイタイ電話にふと目をやると、圏外のはずなのにアンテナが3本も立ってるし。ここの自治体がケイタイ電話の会社にかけあって、中継アンテナ塔を建てさせたのだそうな。まったく野暮なことだ。国定公園内にそこまでするだろうか?

 半年ぶりの温泉、硫黄の香りがなつかしくかぐわしい。硫黄といえば、最近は硫化水素ガスを使った自殺があちこちで問題になっているけれど、硫黄泉は硫化水素泉とも言われている。栗駒山は活火山。登山道脇には硫化水素ガスが噴出しているところがあり、立入禁止となっている。温泉の硫黄は利用価値が高いけれど、濃度によっては猛毒なのだ。

 それはそうと、標高1200メートルの温泉地、すがすがしい風とともに、心ゆくまで満喫してきました。