イラク派兵は違憲

 かなり珍しく、それでいて、どこか懐かしい判決があった。自衛隊イラク派兵の是非を問うた裁判で、きょう二審判決がでた。

自衛隊イラク派遣に違憲判断=米兵空輸「他国の武力行使と一体」−名古屋高裁
 自衛隊イラク派遣は違憲として、愛知県の弁護士と全国の住民らが国を相手に、派遣差し止めと慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であり、青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は「米兵らを空輸した航空自衛隊の活動は(戦争放棄を規定した)憲法9条1項に違反するものを含んでいる」と指摘、憲法違反に当たるとの判断を示した。派遣差し止めと慰謝料請求の訴えは棄却した。
 自衛隊イラク派遣をめぐる同様訴訟は全国で起こされているが、違憲判断は初めて。一審名古屋地裁判決は訴えを退け、憲法判断をしていなかった。
 原告側弁護士によると、9条違反を認めたのは1973年の札幌地裁・長沼ナイキ基地訴訟判決以来35年ぶり。高裁では初という。
 青山裁判長は、航空自衛隊が2006年7月以降、米国の要請を受け、クウェートからイラクバグダッド空港に多国籍軍の兵士を輸送している点について「現代戦において輸送などの補給活動は重要で、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援に当たる」と指摘。その上で「他国による武力行使と一体化した行動との評価を受けざるを得ず、違憲に該当する」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080417-00000087-jij-soci

 記事には「9条違反を認めたのは1973年の札幌地裁・長沼ナイキ基地訴訟判決以来35年ぶり」とあるけれど、憲法9条がらみ以外で憲法判断を求めた訴訟で裁判所が「違憲」を下し、これが確定した判決にこんなのがあった。

 いわゆる岩手靖国違憲訴訟である。岩手県知事の玉ぐし料支出は憲法政教分離原則に反するというもの。住民側は当然のように敗訴となったけれど、仙台高裁は「違憲の疑いあり」との判断を示したのだった。

 被告の岩手県知事は勝訴となったのであるが、「違憲」の判断がついたことを不服とした県知事は、最高裁に上告したのである。ところが勝訴した側が上告するのは不適法とのことで高裁はこれを却下。被告はそれでも引っ込みがつかず、とうとう最高裁へ特別抗告を行った。

 最高裁第2小法廷は、1991年9月に特別抗告は、決定や命令に憲法解釈の誤りや違憲がある場合に限られる(民事訴訟法419条ノ2)ところから、「抗告の理由がない」として抗告の却下決定を行った。
 これにより、靖国神社公式参拝及び玉ぐし料の公費支出は違憲との判断が確定した(政教分離の原則をめぐる裁判で違憲判決が「確定」したのはこれが初めてである)。
引用先http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/iwateyasukuni.htm
ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E6%89%8B%E7%9C%8C%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E8%A8%B4%E8%A8%9F

 住民グループが国家(自民党政権)を相手に訴訟を起こす事例は掃いて捨てるほどあるけれど、そのほとんどすべては原告(住民側)敗訴で終わる。判決文に多少の、住民側への配慮というか色気を免罪符的につけた程度で、ほとんどの裁判官は国家(自民党政権)が正しいと判断し、自民党政権の走狗を立派につとめることになっている。

 でも、どこかひっかかるな、という裁判官もまれにいるものだ。岩手靖国違憲訴訟の仙台高裁の判事もそのひとりだろう。いまも私などが記憶しているくらいだから。それで、きょうの「自衛隊イラク派遣に違憲判断」で、あの古い裁判を思い出した次第である。