新風舎と草思社

 初報時はどの新聞も一面に大きく掲載していた新風舎破産のニュースも、日を追って扱いが小さくなり、焦点だった「未出版の著作を今後どうするのか」といった、契約者の財産にかかわる問題が決着したにも関わらずベタ記事扱いだったニュースをまず貼り付けます。

新風舎文芸社に事業譲渡 未完成千人分の本作りも

 経営破綻(はたん)した自費出版大手の新風舎(東京都港区)の保全管理人の川島英明弁護士は6日、新風舎の事業を自費出版大手の文芸社(東京都新宿区)に一括譲渡したことを明らかにした。来週、新風舎は破産手続きに入る予定だ。

 文芸社は、新風舎と並ぶ自費出版大手。譲渡される事業には、未完成の約1000人の著作づくりも含まれる。これらの作品の制作や流通については、今後、著者が追加負担などの条件に同意して文芸社と契約するか、同意しない場合は作品の返却を受けることになる。

 新風舎は、売り上げ急減による経営悪化から、1月7日に民事再生法の適用を申請した。だが、支援企業との話がまとまらず、同18日に東京地裁から再生手続き廃止の決定を受けた。負債額は約20億円。
http://book.asahi.com/news/TKY200803060391.html

 テレビのワイドショーでも取り上げられるほど全国的な話題になりながら、紙面の片隅にちょこっと載っけられるまでニュース性が損なわれた背景は、メディアにとって「もう終わったこと」という空気が広まった証しでしょうか。文芸社が著者の作品を引き継ぐというのは、カネを払った自称作家さんにとっては確かに朗報でしょうが、その文芸社が果たして将来、破綻しないという保障はありません。碧天舎の契約者を新風舎が引き受け、新風舎がコケたら今度は文芸社。予想された展開です。

 となれば、つぎの展開も予想できる……。

 文芸社は大丈夫か? と、だれでも素朴な不安を抱くでしょう。碧天舎新風舎同様、文芸社も、まったくおなじ商売をやっていて、知人の何人かがここから猛烈な営業攻勢をかけられ閉口したという話を聞いています。

 碧天舎新風舎との違いは、訴訟沙汰といった、著者との表立ったトラブルをいまのところ起こしていないことくらい(私が知らないだけかもしれないが)。でも同じ穴のムジナ。素人作家から原稿をかき集め、カネを巻き上げて、本をつくり出版を請け負う業者であることには変わりありません。

 とはいえ、前述のとおり、新風舎破産で著作出版の夢が崩れかけた“作家”たちにとっては喜ばしいことです。日本の言論文化の底流をなす出版業界にこれ以上汚点を残さないために、文芸社こそはまともな商売を行い、「自費出版」社に信頼を取り戻し、わが祖国の文化育成に貢献してくれるよう期待したいところです。

 *

 ところで日経ベンチャー3月号にて、連載ルポ・破綻の真相「ヒット連発の手法が限界に。永続性に欠けたカリスマ経営 草思社と、あの草思社が取り上げられていました。行きつけの銀行で読んだので記事の細かなところは憶えていませんが、要約すると「破綻の真相」は会社上層部のセンスの無さということになりそう。いまの会長が社長時代につちかった営業手法が陳腐化し、あとを継いだ新社長に才能がなかったということ。不動産投資なども響いたらしい。
http://nv.nikkeibp.co.jp/nv/sales/

 左翼批判を他社にさきがけて時代の先端を走り、小気味よいネーミングで読者の心をつかむまではよかったが、他社の追走からやがて追い抜かれ、ブームとなった新書を出せなかったこともあり、減収つづきに資産も目減りし、負債が増えていった――と。

 草思社については前にも書いたように、大して関心がないのでメモ程度に書きました。そんなこんなで40代最初の日記。