盛岡冷麺

 盛岡三大麺に数えられるもので全国的に有名なのは「わんこそば」だと思うが、地元で食べられる店が多くないことと、そば自体はどこでもいつでも食べられるし、早食い競争の代名詞にもなっているわんこそばを積極的に食べる理由は、私には持ち合わせていない。高いし。

 昨年NHKの朝の連続テレビ小説どんど晴れ」で、知名度が飛躍的にあがったのが、残るふたつの「冷麺」と「じゃじゃ麺」である。

 冷麺は正直、好きである。あのコシの強さとコクのあるスープ、ごついチャーシュー、付け合せのキムチ……夏から秋にかけてとくに食欲をそそる。

 とはいえ、初めて食べたときは「なんじゃこれ、ゴムか?」と、そのコシの半端ならぬ強さにアゴが痛くなるほどで、「これのどこが名物だよ。名物に美味いものなしってのはホントだなや」との率直な感想を抱き、もう食わなくていいと思ったほど。

 でも興味半分の気持ちがふたたびもたげ、盛岡市内の隠れ名店「もりしげ」に行ったのが去年の秋。

 焼肉とともに冷麺を頼んで、ひさびさにゴムの食感を味わってやろうと、冷えたタレに浮かんでいる半透明の麺をズルっとひと口。

 ありゃ? う、美味い…!

 コシの強さは相変わらずだが、食べ方と味わい方のコツをつかむと、冷麺が美味いってことがよくわかった。こりゃー発見だわ。

 よく考えると、初めて食べた冷麺の店は、24時間営業の、安さで多くの客をさばく三流セルフサービス店であった。もう潰れたし。

 でもちゃんとした製法で、こだわりの素材を用いて、腕の良い料理人がこしらえた冷麺は、まさに美味なのであった。

 それ以来盛岡出張の折、月に2〜3度はそこの店へ行き、冷麺を賞味するようになった。550円と安価。量もあるので夕飯にも充分である。

 冷麺といえば平壌。つまりルーツは朝鮮である。東北は盛岡にて冷麺を最初につくったのは、もともとは朝鮮出身の人だそうだ。

 つぎはじゃじゃ麺について書く予定です。