ペットの分際で
防衛大臣の久間章生サンが，24日記者クラブの会見で，アメリカ軍のイラク侵略ついてこんな発言をなさったっけ。
「核兵器がさもあるかのような状況でブッシュ大統領は踏み切ったのだろうが，その判断が間違っていたと思う」
日本同様，アメリカと同盟関係にあるイギリスにさえ，アメリカのイラク侵略に抗議して閣僚を辞任した例があるけれど，日本国はアメリカ追従が国策国是になっていて，日本政府はアメリカの忠実なペットであるから，小泉前首相時代からしてこの姿勢は１ミリも揺るがないと思っていた。
それがこともあろうに，誇り高い旧日本軍の流れをくむ自衛隊の最高責任者たる防衛大臣が，アメリカのイラク政策を批判するとは。
これはよい意味で驚いた。日本国民よりもアメリカ政府を大事にする自民党政府にも，こんな発言をする閣僚がいたんだね。
調べてみたら久間大臣は，昨年暮れごろにもこんなことを参院委員会で語ったそうだ（防衛庁長官時代）。
「（米国のイラクに対する武力行使について）日本は政府として支持すると公式に言ったわけではない」
アメリカのイラク侵略「支持」は小泉サンの個人的見解であるという意味なんだそうな。また久間大臣は「アメリカのイラク侵攻を日本政府は『支持』ではなく『理解』で充分だ」とも話したとか。日本政府のアメリカべったり政策に好ましい印象を抱いていないらしい。ほうほう。
これらの発言が及ぼした波紋がアメリカに広がっているらしい。アメリカ政府は外交ルートを通じて不快感を伝えたんだそうだ。これもちょっと意外に思ったけれど，よくよく考えれば，飼い主がペットに噛み付かれればムカツくのは当たり前か。
「テメー，ペットの分際でなにほざくか」ってとこだろう。裏返せばアメリカ政府は日本の自民党政府を，絶対に裏切ることのない，忠実忠誠そのものの愛玩動物と見なしていたわけだろう。それが閣僚から批判かまされてカチンときた。アメリカ政府を怒らせるなんて大したもんだ。
久間大臣は沖縄のアメリカ軍普天間飛行場の移設問題についても，アメリカの無思慮ぶりに批判じみた発言をしていたから，かねてからアメリカの横暴を苦々しく思っていたのだろう。それに自衛隊最高司令官としてのプライドもあったのかも。
野党がこれらの発言を「正しい」と言うのもうなずけるが，内閣不一致を叫ぶのもむべなるかな。この問題が外交問題にならないのも国会で取り上げられる兆しが見えないのもちょっと寂しい。九間大臣の言い分は私もまったく正しいと思うが，結局は一閣僚の個人的見解で終わってしまうのだろうか。
