国家犯罪は鬼門
横浜事件――戦時下における最大の言論弾圧事件として知られるこの事件。
事件が国家によるでっちあげで,国家の「治安維持」のために,神奈川県警は「特別」で「高等」な「警察」官を派遣し,拷問して“自白”させ,4人を獄死たらしめ,なおかつ30人もの無実の人に有罪判決を横浜地裁が下した事実を後世に伝えるべく,犠牲者(元被告)の遺族らが繰り返し行っていた再審請求にて,これが認められたのが2003年。高裁も05年にこの決定を指示した。
で,06年にあの横浜地裁は「免訴」との判決。横浜事件なんてなかったことにしてしまった。なぜなら治安維持法も特別高等警察もとっくに消えたから。地裁の先輩たちは,あの当時全員有罪にしたけど,法律が消えた時点で恩赦・釈放してやった。これでチャラになった。したがって裁判なんて必要なし,との判断だ。
さすが横浜地裁であった。
そしてきのう東京高裁にて控訴審判決。
棄却。「免訴なのに控訴するなヴォケ」と。
先輩たちの恥を隠したくてか免訴を放った横浜地裁のみならず,遺族の再審請求を追認した東京高裁ですら,結局この程度なのだった。
日本の警察・検察・司法なんてこんなものである。
国家犯罪。日本国の闇の部分に立ち入ろうとする者は,まさに門前払い。入り口で跳ね返される。一歩たりとも中へ入ることは許されない。
当時を知る人もほとんどいなくなった,半世紀以上も経つ遠い過去の事件でありながら,国家がからむ犯罪は歴史の闇に葬り去ろうという意思が見え隠れしている。日本皇国の汚い箇所は徹底的に隠せ,消せ,掘り起こさせるな,と。
そんな民主国家もあったもんだ。
どこぞの国の国家犯罪を糾弾しても,自分らが暮らす国の国家犯罪を裁くどころか隠そうとする。あわよくば正当化しようとさえも。根っこから腐った政権に未来があろうか。