愛国心のかたち

http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0033

北海道新聞』のコラム「卓上四季」(2006年12月14日)のURLです。ほんとうは全文貼り付けたいのですが,一切の無断転載を禁ずるとあるからにはルール違反はできません。

教育基本法改悪が間近にせまり,安倍総理大臣に対して「愛国心は押し付けられるものではない」と意見書を送った道内の女子中高生に中傷メールが相次いだことが書かれていました。コラム子は「異論を許さない風潮が強まった。国賊反日など乱暴なレッテル張りさえ目にする時代だ」と憂いています。

「異論を許さない風潮」はたしかにここ数年で加速したようです。小泉サンのころからその動きが顕著になってきました(特にイラク自衛隊派兵のころ。日本人5名が武装グループに拘束されたときの主流マスコミと国民の反応は記録に値する)。女子中高生に中傷メールを送った人たちはその急先鋒なのでしょう。愛国心を押し付けたいのではなく,政府与党が決めようとすることに対する「異論を許さない」のでしょう。

さりとて中傷メールを送った人たちが真の愛国者であるはずがないし,政府与党・国家の忠実なシモベであるとも思えません。生意気なヤツが現れれば,なにか癪に障ることがあれば,どうにも押さえきれなくなって考えるより先に手が出てしまうという,いい加減な気持ちで中傷メールを送っただけなのではないでしょうか。

ことしの蹴球(サッカー=フットボール)ワールド=カップで日本は予選で敗退しましたが,あの砂上の楼閣のような「サムライ=ジャパン」に寄せる期待が,予選敗退を見て潮が引くように鎮まっていった現象。にわかサッカーファンとコアなサッカーファンの違いが浮き彫りになって,マスコミに乗せられやすい主流日本人の側面を垣間見たような心境にとらわれました。

愛国主義はならず者の最後のよりどころ」とは,よく引用するイギリスのサミュエル=ジョンソンの言葉。日本にも愛国心を説く声がたしかに高まっていますが,これに呼応しているにわか“愛国者”さんは,実はその大多数が単に政府・マスコミに乗せられているだけで,自身は深く考えず,思い込みだけで行動しているのではないでしょうか。

そう考えると,「国賊反日など乱暴なレッテル張り」に見られる戦前回帰・復古主義ともとれる現象は,それをやっている人たちが自分の幼さ・見当違いに気づけばいずれ収束することだろうと,ほのかな期待も抱けるかもしれません。