ある「右翼」の実像

日経BPで出版している月刊『日経ベンチャー』に2月つづけて興味深い記事が載っていたので紹介しておきましょう。

http://bpstore.nikkeibp.co.jp/mokuji/nv260.html
2006年5月号――追跡ルポ・破綻の真相「銀河高原ビール[ビール製造販売] 著名経営者を溺れさせた『1度目の成功』の美酒」

かんたんに言うなら,東北でもトップクラスの経常利益をあげていた「著名経営者」たる東日本ハウスの中村会長(現在は辞任)は,おのれの野心と慢心と過信の果てに「銀河高原ビール」なる地ビールの製造販売に手をだし,業績悪化を招いて結局は撤退した――という内容です。

岩手県西和賀町(旧沢内村)に「沢内銀河高原」というホテルが建てられたのはもう10年以上も前でしょうか。銀河高原ビールは,天然酵母をつかった本格ビールの走りとしてかなり話題になり,規制緩和の波に乗って全国各地に続々と誕生した「地ビール」の象徴的なビールです。大手メーカーのとはちがった味わいとのど越しのよさから,飲んだ方も多いと思われます。

実際,銀河高原ビールはマジおいしかった。

でも住宅建築メーカーの草分け経営者が,酒類製造にはその手腕が空回りだったようです。ま,詳しい内容は記事を取り寄せて読んでいただきたいと思います。

それとはべつにこの中村会長はちょっとアレなんです。

『プライド 運命の瞬間』(伊藤俊也監督)なる映画を憶えている方,いますでしょうか。津川雅彦主演のやつです。その製作に,資金面で関わったのですね。息子さんは衆議院に旧岩手一区から立候補もしてて一期努めました。その政党名は青年自由党で,中村会長はその党首なんですね。

青年自由党とくれば“右翼”を連想される方も少なくないにちがいありませんが,中村会長はどういうのか,住宅建築で設けたカネを映画づくりに投入,これが結構な興行成績を収めたわけです。東京裁判で日本無罪論を展開したインド人判事の近縁者を岩手に招いたりとか。いっぽうでは地元の山村に大きな温泉ホテルを建造し,地ビール製造と売り込みに着手。もっともホテルはそこそこ利益をあげているけれど地ビールは大外れ。

『沢内銀河高原』については,いろいろうさん臭い話しが聞こえてくるのですが,東日本ハウスにはちょいお世話になってたりするんでこれ以上書きません(笑)。

ま,中村会長個人に対してちょっとだけ言うと,「右翼」を自称(?)するなら,岩手の伝統と文化と自然を愛したらどうか,と言っておきましょう。死刑になったA級戦犯復権・名誉回復よりも郷土の古い文化と歴史に目を向けろ,とね。

古代岩手の遺跡保全・再生に大きな力を尽くしたT社という土建業者が盛岡市内にあるけれど,そういうことはしないのかいな。東条英機とかよりもアテルイや三閉伊一揆や小繋事件には興味ないのかな。もともとあなたも祖先は「俘囚」と呼ばれ,土人扱いされたのでは? 

え? 会長さんは大阪生まれで? 

そうだったんですか,岩手の評判を落としにいらっしゃったんですね^^

こんなんでも名乗れる「右翼」て,なんなんだろうね。

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日経ベンチャー記事もういっこは6月号のやつですが,これはまたの機会に。