来賓の元教員に罰金か
卒業式のさい,来賓である元教諭が卒業式の進行を遅らせたとかで,校長と教委が告訴(提訴でも処分でもない)していた裁判。被告の元教員に罰金か。
この報道で「被告は卒業式を混乱させた悪徳教師なんだ,処分・罰金は当然だ」と思っている人が多い多い。ヘソ曲がりが異端視され,叩かれる風潮は果たして健全な社会なのかどうか。そうした流れに逆らうのがなんか怖くなってくるが,ここに当時の卒業式の模様をはじめとする事実を述べて,バランス(均衡)の保持を試みてみよう。
「君が代斉唱時の起立に反対して式の進行を妨害したとして」
「君が代斉唱時の起立に反対して」はわかるが,「式の進行を妨害した」とは具体的になにをやったのか。
この年(2003年)3月に行われた都立I高校の卒業式は,校長や都教委の言い分によればこう。
「校長などの制止にかかわらず,教員が週刊誌の記事コピーを保護者に配布し,大声で叫んだ」
都教委と校長は,連名でI署へ被害届を出した。これが一連のおおまかな経緯。
さて事実はこうだ。
卒業式がはじまる少し前,会場の体育館にて,来賓のひとりである元教員が,サンデー毎日の記事 【東京都教委が強いる『寒々とした光景』】 コピーを保護者に配りはじめる。元教員からコピーを受け取った保護者は,それを手馴れた調子で隣りの席へと流していった。
そして元教員が発言した。
「国歌斉唱のとき立たないと教職員は処分されます。国歌斉唱のとき,できたら着席をお願いします」
そこへ教頭が「やめろ!」と叫びながら駆けつけた。
元教員は「もう終わったよ」。
卒業式の進行を監視にきていた都の指導主事の手前か,校長は来賓であるこの元教員に「退去!」と叫び,元教員は退場した。
以上は卒業式が行われる前の出来事。卒業生たちはまだ会場へ入ってきていなかった。したがって元教員の姿も行動も見ていない。
卒業式がはじまった。
卒業生たちがつぎつぎと入場。
教頭が開式を宣言する。
司会の教員「国歌斉唱」。
生徒たちがいっせいに着席した。
校長と教頭が怒鳴った。「起立して歌いなさい!!」
校長・教頭・都議,3人の怒号が体育館に響いた。
教頭の近くにいた卒業生がつぶやいた「思想・信条の自由はどうなるんだ」の声を聞きつけた教頭が「信念をもって座っているもの以外は立ちなさい」と言いなおした。
九割以上の生徒が,「信念をもって」着席した。
その後の式の進行。
卒業証書授与,来賓のあいさつ。滞りなく進み,閉式の辞では盲目の卒業生がピアノの前に座った。
3年間お世話になったお礼にピアノを弾いて,卒業生が高らかに歌った。
卒業式は感動的に締めくくられた。
式中に怒号を放った土屋都議が,式場から出てこう感想をもらした。
「完璧にきれいにやっていました」
土屋都議は,会場でケイタイ電話で会場の写真を撮っていたという。電話を切るように呼びかけていたアナウンスを無視していたらしい。
土屋都議は都議会で,元教員の行動に「厳しく法的措置をとるべき」と都教育長にせまり,教育長は「措置をとる」と断言。
まもなく校長と教委は,さきに書いたように連名でもって,元教員を告訴した。
*
以上が事実です。読んだ方はそれぞれに受けとめてください。
**
↑というようなことをミクシーに書いたのだが,なんか誤解が目立つ。被告は来賓=お客さん=元教員=この高校のOB職員であって,高校の現役職員ではない。だから「処分」はありえないのだ。なのに「処分は妥当」だの,「都教委・校長命令に従わなかったのだから」だのと,前提となる事実関係から誤認が…汗。
高校とも教委とも直接無関係のお客さんが,なんで処分をうけるのか。なんで職務命令を受けるのか,従わないといけないのか。
もしかして俺の書き方がいけなかったのかと思った。
ある意味,とても参考になった。ネットやニュースを見ている人の中で,事実誤認を恐れない能天気がかなり多いことがわかって。