タヌキさん

 盛岡からの帰途が遅くなった昨夜、秋田自動車道を走っていると、車道の中央にいた動物が、不意にこちらの車線に入ってきた。

 タヌキだ、避けないと! 急ハンドルを切ったけれど、避けきれなかった。

 かなりの衝撃を感じた。時速100キロ超で走っていた乗用車だ。

 あれではタヌキはひとたまりもあるまい。死骸を見たわけではないが、前部右タイヤを覆っている樹脂が破損していたから、まず即死だろう。

 タヌキを轢いたのはこれで確か2度目。前は胆沢町奥州市)でやらかした。

 俺としたことが、野生動物を殺めてしまった。

 すまん、タヌキよ。おまえにも家族もいれば将来もあったろう。それを無残に破壊した俺を呪ってくれ。

 しかし……こう考えてみる。

 轢いた直後にタイヤ付近から異常音がしたので、待避所に車を止めて点検したが、その数分間、走行を中断したおかげで、重大事故を回避できたのかもしれない――と。

 タヌキが自分の命をもって俺を救ってくれたのかも、なんてね。

 だとしたらなおさらタヌキに謝らねばならない。

 許せタヌキよ。