夕焼け小焼けで

 内勤で執務をとっていると、開け放した窓の外、スダレ越しに空高くから聴こえてくる声。

 「キィキィキィキィキィ…」

 チゴハヤブサだ。タカの仲間なのでカラスに追われていることが多い。

 子どものころから野鳥や昆虫・魚に興味を持っていたが、野鳥の生態の移り変わりは郷里の自然の変遷そのものであった。

 自宅そばを流れるM川には、キセキレイがいつも飛んでいて、スマートな姿に長い尾を振りながら、私の挙動をずっとうかがっていたのが、いまではハクセキレイに居場所を奪われてしまい、キセキレイは沢筋でひっそりと生きているだけ。

 20年ほど前から爆発的ともいえるほど増えたのがアオサギダイサギゴイサギだ。エサとなる小魚が、彼らをあそこまで繁殖させるだけ川に豊富であったろうか、どう考えても不思議である。

 しかしサギ類は明らかに増えている。おなじく魚をエサにするカワセミやヤマセミもちょくちょく見かけるから、魚が川に一定数は生息していることは確かだろう。水路のコンクリート化や水質悪化が改善された様子はないのに、いったいなぜ?

 そしてここ2〜3年、目立つようになったのがチゴハヤブサ。市外地でも珍しくなくなった。

 チゴハヤブサは空を滑空してトンボなどを捕食する。彼・彼女らが増えたとすれば、やはりエサが豊富になったことが大きな要因だろうが、それ以外に考えられる理由としたら、天敵がいないということもありうる。

 天敵といえばカラス・フクロウ・中・大型のタカ類か。

 カラスが減ったなんて思えないし、フクロウも夜更けになれば相変わらずくぐもった声を聴かせてくれている。大型猛禽類は…これはたしかに減少の一途だが。うーむ。

 また鳴いている。夕焼けの空に、チゴハヤブサの描く滑らかな曲線が目に浮かぶ。