小田和正考

binzui2005-06-05


小田和正がオフ = コース時代に歌っていた曲の数々を,いまふうにアレンジした『LOOKING BACK』というふたつのアルバムを,レンタルして聴いてみた。もう2年も前のことだけど。

ニューミュージック界の草分けオフコースは,小学生のころにハマってしまった。『愛を止めないで』を聴いて以来ずっとファンだった。アルバムはほぼぜんぶそろえて,どの歌もそらんじていたくらいだ。田舎だからコンサートには行けなかったが,メンバーの何人かが秋田出身ということもあり,親近感すら覚えていた。

でも『NEXT』というアルバムを発表したあたりからだろうか。小田の歌声に張りが強くなってきて,それまでの歌い方・声の出し方を変えたのかどうか,目を閉じて聴いていたころの耳あたりのよさを感じられなくなった。

だんだん,人の歌う音楽はあまり聴かなくなってしまった。東芝EMIはオフコースの優れたインストゥルメンタル(ボーカルなしの音楽)もいくつか出してあって,そっちに趣味が移っていってしまった。でもオフコースのファンはやめなかった。『さよなら』以前の曲はあいかわらず好きだったし,暇なときはいつも聞いていた。

鈴木康博が脱退し,1989年2月にオフコースが解散して,名実ともにファンを卒業することにしたが,もうそのころはオフコースの新曲に関心がなくなっていた。

好きだった歌の多くが『LOOKING BACK』に収録されていると聞き,現代の小田があの歌をどんなふうに歌っているのかを知りたくて,レンタルショップに走った。『愛を止めないで』『愛の唄』『やさしさにさようなら』『こころは気まぐれ』『僕の贈りもの』etc…大好きだった懐かしい歌を,昔のファンのために小田が歌ってくれていると期待して。

CDを再生してみた。

プレイヤーから流れる歌は,聴くに堪えない歌だった。かつての小田の声に満ち満ちていた,やさしさ・せつなさ・みずみずしさ・たおやかさが,完全無欠に消えうせていた。歌詞を改ざんしているのも許せなかった。

過去の小田の声は,森の風に似たやさしさに包まれていた。素朴で純粋な空気が音になって鼓膜をくすぐる心地よさがあった。

しかし今の小田の声・歌い方は,薄汚れた地下道のような,ゴミゴミした雑踏の臭いだ。むせ返るような人いきれのする,人工的で無機的でいたわりの感じられない,雑音に等しいモノだった。淡い期待はあっさり,裏切られた。

2枚のCDはその日のうちに返した。

 *

とまあ,小田和正ファンが読めば刺されそうなことを書いてみました(汗w)。

小田さんをけなすつもりはまったくないんです。オフコース時代の小田さんはいまも大好きですし,ラジオからオフコースの歌が聴こえてくれば音量を上げたり,めったに出ないテレビで小田さんを見かければ目がクギ付けになるくらい。

でも,小田さん変わったね。時流にへつらうってああいうことなんですね。より売れる歌を追求するあまり,昔の歌い方を捨ててしまうんでしょうね。昔からのファンを切り捨ててしまうんでしょうね。

どんな歌い方でも小田さんが好きっていうひともいるでしょう。また私とは逆に,いまの小田さんの歌に心惹かれるひともいるでしょう。オフコース時代の歌に興味ないひともいるでしょう。つまりは好みなんですね。そのときどきのファンの心理を,小田さんは上手に読み取っているんだと思います。松任谷由美もそう。売れない歌を歌いつづける歌手もいるでしょうが,売れなくなって忘れ去られゆく小田さんなんて想像したくないですしね。

はー……でもあのころの小田さんの歌声がもう聴けない一抹の寂しさを感じるのって,私だけなんでしょうか。ごめん>いまの小田ファン。

(旧ノートから)

4年以上たって追記。「やさしさにさようなら」YouTubeからうp

 オフコースの曲で一番か二番めに好きな「やさしさにさようなら」、そのライブバージョンがようつべにあがってたので記念にうp。編集・修正された人工的な音楽でない、目の前で小田さんがナマで歌っている様子が目に浮かびます。(2009年11月1日)