良いことずくめの登校拒否

 いじめから逃れる手っ取り早い方法があります。

 学校に行かないこと。そう登校拒否。

 朝に先生へ電話かメールしましょう。「学校に行くといじめられるので行きません。勉強は自宅でやります」と。

 ハイこれでもういじめに遭う心配はなくなります。あなたをつらい目に遭わせているアイツらは,あなたの家に来てまであなたをいじめたりはしないでしょうから。

 家族にはこう話しましょう。「学校で○○や××からこんなことをされて,とても行きたくないから,もう学校へは行かない」と。

 家族がOKすればよし,「ダメだ,学校行け」とせまるなら自室にこもるか,学校に行ったふりして図書館あたりで時間をつぶしましょう。

 なぜ学校へ行くの? いじめられるのに。行きたくないのに行くということは,登校拒否になにか罪悪めいたことでも感じるのかな。家族に気兼ねしてるのかな。

 学校へ行くことのメリットとデメリットを考えれば,いじめられるとわかってて,それでもどうしても学校へ行きたい事情があるならともかく,不愉快どころか自殺を選ばざるをえないほどの仕打ちを受けてまで,登校をつづける理由なんてどこにもないんじゃないでしょうか。

 したがっていじめを受けている人は,あしたから登校をやめましょう。私は断言します。登校拒否は罪悪ではありません。仮に罪悪だとしても,あなたをいじめているヤツらの卑劣さにくらべたら物の数じゃない。

 登校拒否は,あなただけの小さな決断でできることです。さあ自信を持って,胸をはって主張しましょう。「いじめられるから登校拒否します」と。

 いじめの全面的な解決は,まず登校拒否から始まります。

 * * *

 まあこんなことは,中高生諸君なら言われなくたってわかっていることだと思う。それでもなお登校する理由を説明するにも,被害者が言葉につまる光景が目に浮かぶ。

 おそらくは「学校へ行かない=悪い選択」という厄介な概念が邪魔をしているのだろう。いじめ問題に関わる識者で登校拒否を声高に主張する例がめったにないのがその証拠になろうか。無責任に「死ぬ覚悟があるなら戦え」などと煽る知事もいれば,「いじめられる側が強くならないと駄目だ」といじめの潜在化を助長する俳優もいる。みんな登校しているから自分も行かないと――という右習えの日本的精神風土が根底にあるせいか,この構図を打破する妙案が浮かばず解決は容易ではない。

 そういうわけで教育問題にちょびっとかかわっている身として,間欠的に考えてみたい。