10.25成瀬ダム問題全国集会

成瀬川に遊ぶ。2000年8月撮影


 この件に関わるようになって13年くらいになるけれど、ついにここまで来たのだなー。

 横手市の農協会館にて「成瀬ダム問題全国集会」が、きょう行われた。いま新政権により全国の耳目を集めている八ッ場ダムと川辺川ダム問題。長きにわたった自民党による悪政でドス汚れた祖国日本、その大掃除におおわらわの政権与党を後押しするのと、ブレないように釘を刺すのと、八ッ場・川辺川はじめ、全国各地で奮戦している有志たちの活動を側面から支援する目的で、なんと「全国集会」が、わが郷里・秋田で開催された。

 2〜3年前ころより、自分の時間が思うようにとれなくなったため、私の参加は微妙であったが、どうにか列席することができた。過去にもこういった集会に参加したことはあるものの、せいぜい東北6県が対象の中規模な集会。それでも100人程度の参加者がほうぼうから集まったものだが、今回の参加者は、全国各地から、おそらく200人ちかいだろう。これほどの規模で開催できるとは、10年前には想像もしなかった。

 聞けば、このほど国交省が発表した凍結ダムの中で、成瀬ダムは「中止」にかなり近い存在なのだそうだ。春に県を相手取って訴訟を起こしたばかりだが、政権交代の勢いに乗ってダム中止に持っていくことのできる筆頭株に、成瀬ダムが選ばれたということで、全国からそうそうたる顔ぶれが一堂に会したのである。

 そのおもな参加者をざっと並べてみる。

 水源連顧問・藤田恵
 成瀬ダム住民訴訟弁護団長・沼田敏明
 フリージャーナリスト・岡田幹治
 民主党参議院議員大河原雅子
 民主党衆議院議員京野公子
 社民党副幹事長・保坂展人
 国民新党秋田県議・石川錬治郎
 共産党秋田県議・山内梅良
 水源連共同代表・嶋津暉之
 成瀬ダムをストップさせる会代表・奥州
 など。(左からの席順=敬称略)

 えらい驚いた。嶋津さんや大河原さんの参加は前もって聞いていたけれど、藤田さんや保坂さん、岡田さんなど、日頃から尊敬する名士・ライターまでもが秋田を訪れたとは。もし参加していなかったら死ぬまで後悔していたに違いない。やれやれ。

 会は、まず地元のシンガーソングライター杉山さんのミニコンサートからはじまり、奥州代表の、これまでの成瀬ダムの経緯と事業の問題点、今後の活動内容など報告があった。

 沼田弁護士による住民訴訟の概要説明のち、ダムの問題点を以下に書いてみる。
1.現場は森林生態系保護地域そばであり、自然環境調査の手法が疑問。
2.治水効果は薄く、代替案の検討も不十分。
3.灌漑用水の見積もりが過大ではないか。県が費用を肩代わりするのも違法の疑いがある――などなど。

 水源連の嶋津さんは「科学的検証」と称して、成瀬ダム問題を詳細に分析してくれた。これにはマジ驚かされた。というのは、嶋津さんは治水が主の八ッ場ダム関連のリーダーではあっても、農業用水が主である成瀬ダムには、さして深層を突けないのではと思っていたからだ。それが腰を抜かすほどの的確かつ、本質をとらえた分析であった。あまりにも正鵠を射た検証ぶりに、メモをとるのも忘れてしまったほど。

 第二部の各出席者の談話を、ごく簡単に要約する。(発言順)

 大河原さん。「ダム問題で苦しんできた地元の人たちへの救済を前提に、ダム事業の縮小をめざす。いまは公共事業にお金を使う時代ではない」

 保坂さん。「成瀬ダム建設地はすばらしい紅葉であった。沖縄の淡瀬干潟訴訟で『漫然とした公金支出は違法』との画期的な判決が得られたのは象徴的。公共事業は質的転換を目指すべき」

 石川さん。「成瀬ダムは中止すべき。県知事は代替案を出せというが、ダムに頼らない流れが出来つつあるいま、代替案を国に求めるのは無責任。秋田市内の中小河川と雄物川治水事業への投資の仕方もおかしい」

 山内さん。自民党政治からの脱却こそ命題。ゼネコン優遇の政策をあらためた上で、ダム中止も代替案も、国民合意のもとに進めるべき。今後は自然を活かす道を示していきたい」

 藤田さん。「(細川内ダムを)中止した流れが、ここまできたことが感慨深い」

 スケジュールの都合で遅れてやってきた京野さん。「これからの日本が目指すべき治水・利水とはなにか。感情的ではなく、対論的に公共事業のあり方を考えていきたい。利水も治水もたしかに必要、それに地元では経済効果を唱えている。経済対策にダムが必要というのは疑問だが、地元がダムに期待しているのは事実。いたずらに対立をあおらず、円卓会議のような形で話し合う場をつくり、大いに意見交換して、解決への糸口を見出したい」

 といった内容であった。

 集会には、それこそ全国から有志があつまった。八ッ場・川辺川両ダムはじめ、徳山ダム苫田ダム、設楽ダム、山鳥坂ダム、サンルダムなどから、現場で戦っている人たちが、秋田へ遠路はるばる、わざわざ足を運んでくださった。出席者の中には新潟大学の大熊孝名誉教授や、まさのあつこさんもおられ、あとで知ったが高橋ユリカさん鈴木郁子さんも参加されていたらしい。いずれも著作などで大変参考にさせていただいてる尊敬するジャーナリストである。ただただ感謝するのみ。

 多忙なため、私は最近はあまり活動に時間をかけられなくなり、欠席することが多くなってしまった。申し訳ないばかりである。これほどの規模の集会を開くところまで続けてこれたこと、感慨ひとしおである。リーダー以下メンバーの苦労をねぎらうとともに、有志らの活動・努力が、近い将来きっとむくわれ、実を結ぶことを確信したのであった。